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2011年 02月 26日
(採点はあくまで私の主観に基づいていますので、私のレベルが低いせいで理解が及ばす、伸びない場合も多々ありますので悪しからず)
1月に観た映画 その男ヴァンダム (DVD) ベルギー・フランス・ルクセンブルグ 77点 ジャンクロード・ヴァンダム本人が故郷の町で銀行強盗に巻き込まれるという設定から推して、てっきりコメディなのかと思ったが、コメディはコメディでもかなりブラックな味わいの映画だった。 途中、ヴァンダムが過去を振り返って独白するシーンはさながらドキュメンタリーのようで、もしあれが演技だとしたらヴァンダムの演技力も相当なものだと思えた。 ヴァンダムってフランス人だとばかり思っていたけれど、この映画を見てベルギー人だって初めて知った。 殺しの烙印(DVD) 日本 75点 昨年の暮れに読んだ鈴木清順のエッセイに、この映画のせいで日活をクビになったと書いてあったが、ファンの間では伝説のカルト・ムービーといわれる映画。 前半は殺し屋役の宍戸錠もカッコ良く、映像もスタイリッシュで、案外普通のギャング映画なのだが、後半になると話があらぬ方向に流れていって、正に清順ワールド が炸裂する。 性格俳優の南原宏治も、後半になるとその怪優ぶりを遺憾なく発揮する。 最近になって再評価されているようだが、公開当時は全く人が入らなかったらしい。 でも、この内容じゃ仕方なかったろうね。だって、普通の映画見慣れた人にはちんぷんかんぷんだろうし、当時はこういう映画を面白がれるマニアックな映画ファンもそれほどいなかっただろうし。 でも、それ以前に立て続けにヒット作を作っていながら突然こういった映画を撮ってしまうところが、流石に並の監督じゃない。 ザ・バンク 堕ちた巨像 (DVD) アメリカ・ドイツ・イギリス 73点 巨悪に立ち向かう孤高の捜査官というよくある図式ではあるものの、前半はかなりシリアスに話が展開して面白かった。 でも後半、美術館でいきなり銃撃戦が始まってしまってがっかり。 渋い社会派ドラマを期待している観客にとってはこれは無用な展開に思えたけれど、さりとてアクション映画が好きな人にとっては些か物足りないのではないかと思えるような、なんとも中途半端な映画だった。 監督のトム・テクバは「パフューム/ある人殺しの物語」が結構好きだっただけに、今回の映画はちょっと残念。 リミッツ・オブ・コントロール (DVD) アメリカ 76点 ストーリーがあってなきような映画で、正直ちょっと退屈だった。 ただ、ジム・ジャームッシュ監督はスペインを舞台に自分の好きな俳優を使って映画を撮りたかったんだろうなきっと、と思わされるようなショットも多かった。 ティルダ・スウィントン、ジョン・ハート、ガエル・ガルシア・マルケス、ビル・マーレーなどのアカデミー賞クラスの俳優が何人も配されているところも見所だった。(中に工藤夕貴が入っていたのはご愛嬌?) でもエンターテイメント性重視のアメリカ映画界の中で、エンターテイメントに捕らわれない映画を作り続けて、尚且つ多くの支持を集められるのは稀有な事だろう。 主演を演じた、「24」にも出演していたイザック・ド・バンコレの存在感は圧倒的。 明日へのチケット (DVD) イタリア・イギリス 74点 中東とヨーロッパの巨匠監督3人によるオムニバス形式の映画。 ローマに向かう長距離列車の中で起こる出来事をゆるいつながりで描いているのだが、私としては後半2作品の登場人物の列車の中のマナーの悪さが気になってしまって、それがかなり減点対象になってしまった。なんかうるさくって、生理的に受け付けないというか・・・。 名監督の作品なのに残念。 ソーシャルネットワーク (劇場) アメリカ 80点 猛烈な勢いでIT用語が連発されるので、最初は付いていくのが大変だった。 でも、語られているのは案外いつの時代にもあるような普遍的なことで、そのギャップが面白かった。 とにかく台詞が多いが、それが自然に聞こえるようにそれぞれのシーンを何十テイクも撮ったそうだ。 その成果が現れてか、主演のジェシー・アイゼンバーグと助演のアンドリュー・ガーフィールドは様々な賞にノミネートされた。 1月に読んだ本 青い眼が欲しい トニ・モリスン 83点 1970年前後には「Black is Beautiful」という標語が盛んに使われたものだが、これはそれ以前、黒人が白人の価値観でものを見ることを余儀なくされていた時代、それによって黒人が黒人を貶めてしまう様が、繊細な筆致で描かれている。 モリスンの処女長編だそうだが、後の「スーラ」や「ビラヴド」に見られるような抽象的な表現も少なく、却って読みやすい。 黒人の、それも女性の作家が書いた小説で日本に紹介されている作品はそう多くないので、それだけに今まで読んだ事がないような視点で物語が描かれていて考えさせられる。 脳髄震撼 サミュエル・フラー 84点 B級映画の巨匠であり作家でもある作者の3作目の長編小説だそうだが、私はこの監督の映画、もしかしたら若い頃にテレビで見たことがあるかもしれないが、全然記憶にない。 でもこの小説、題名のインパクトに負けない内容の、そこらのミステリー作家の作品なんか及びもつかないくらい面白い犯罪小説だった。 にもかかわらず、本国アメリカでは出版されず、フランスでのみ出版されているのだそうだ。もったいない話だ。 医者も原因がわからない脳の症状に悩まされる主人公がある女性に一目ぼれしてしまうのだが、半端ないその一途さが切ない余韻を残す。 刊頭にあるアル・カポネの言葉―「愛は運び屋を詩人もしくは狂人にする」―はこの小説の中味を端的に表していて、フラーの映画と小説をもっと見てみたいと思わされる。 それにしても、カポネって案外文学的素養があったのね。 マティス・ストーリーズ アントニア・スーザン・バイアット 82点 3枚のマティスの絵をモチーフにした、男女が繰り広げる人間模様を流麗な筆致で綴った短編集。 シニカルな中にも人間に対する優しさが感じられ、なにより絵を題材にしているだけに、視覚的な表現が鮮やかで、読んでいると目の前に色や情景が拡がってくる。 この人の小説は初めて読んだけれど、二人の妹も作家だそうで、現代のブロンテ姉妹と呼ばれているのだそうだ。 告白 湊かなえ 78点 昨年公開されて話題になった同名映画の原作本。 冒頭のホームルームでの女教師の告発シーンは映画のほうが強い印象を残すが、逆に犯人の一人である少年の母親の告白は原作の方がよりリアリティがあって理解しやすかったというように、映画と本、それぞれ一長一短あるが、基本的には映画は原作にかなり忠実に作られている。 いづれにしても、少年犯罪という取り上げるには難しいテーマをエンターテイメントという切り口で描いている点は共通していて、映画同様些か疑問の残るラストだった。 それにしてもこの作家、処女長編がこんなに爆発的に売れてしまって、この先一体何を書くんだろう。 ハロー ヨースタイン・ゴルデル 77点 作者は「ソフィの世界」を書いたヨースタイン・ゴルデル。 なんだかきも可愛い挿絵がたくさん入っていて、宇宙や進化や夢に関する考察などが子供でもわかる文章で書かれている。 が、内容は案外深く、大人が読んでも充分楽しめる。 路上 ジャック・ケルアック 73点 名作の呼び声高いが、私は以前読んだ「地下街の人びと」も含め、この人の小説はどうも苦手だ。 元来旅というのにあんまり興味がないせいもあるかもしれないが、主人公の、友人に引きづられているような主体性のなさがなんとも歯がゆい。 後半になるとヘンリー・ミラーを思わせるような散文的な文章がちりばめられ、それはそれで読み応えがあるが、生き様としては全然共感出来ない。 こんな小説読むんだったらヘンリー・ミラーを読んでるほうが良い。 老人のための残酷童話 倉橋由美子 79点 久しぶりに読んだ倉橋さんの小説。 齢を重ねても毒を含んだ文章で夢幻の世界を描く作風は相変わらずだが、「大人のための残酷童話」から20年後に書かれた本作は、やはり自身の年齢を意識して書かれているのだろうか。 登場する老人たちは年齢の割には皆どこか生臭いが、結局最後には恐ろしい結末を迎える点、なんとなく最近の老人たちへの警句のようにも読める。 若者に比べ老人の人口が圧倒的に多くなってしまい、メディアなどでも老人に対して辛口のコメントを言える人は少ない昨今、倉橋さんのような人にこそもっと長く生きて欲しかった。 魔女の一ダース 米原万理 81点 人間の常識では1ダースといえば12だが、魔女の世界の1ダースは13なのだそうだ。 副題に「正義と常識に冷や水を浴びせる13章 」とあるとおり、世界にはいろいろな常識があるという事を、読書による該博な知識と世界中を旅するロシア語通訳としての経験から検証していて、固定観念に縛られる事の愚かしさを痛感させられる。 米原さんの下ネタ好きも、実はロシアの影響らしい。 このような有能な人が早くに亡くなってしまうなんて、本当に残念だ。 ※下記の広告はExciteの営業活動の一環として掲載されるもので、主催者が載せているものではありません
by chiesan2006
| 2011-02-26 03:57
| 映画と本
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