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2008年 03月 25日
2005年、第78回アカデミー賞外国映画部門にノミネートされたパレスチナの映画。
惜しくも賞は南アの「ツォ・ツィ」に持っていかれたが、「ツォ・ツィ」に劣らぬ衝撃的な内容の映画だ。 パレスチナ人のハニ・アブ・アサド監督がイスラエル人プロデューサーと手を組み、ヨーロッパ各国の共同制作という形で作られた映画だそうだが、題材がパレスチナ人によるイスラエルに対する自爆攻撃ということもあって、公開されるや様々な議論が起こり、アカデミー賞ノミネートの祭にはイスラエル人による反対運動まで起こったという曰く付きの作品。 内容は以下の通り(ネタばれあり) ヨルダン川西岸の都市ナブレスは長い間イスラエルの占領下あにあり、街にはしばしばロケット弾が打ち込まれ、人々は貧困にあえいでいた。 そんな閉塞した状態のなか、幼なじみのサイードとハーレドは自動車修理工場で働き、なんとか日々の暮らしを凌いでいる。 ある日工場にスーハという女性が車の修理を依頼しに訪れる。スーハの父親は殉教者でパレスチナの英雄だったが、スーハ自身はヨーロッパで教育を受け、パレスチナ育ちの若者たちとは違った考えを持っている。そんなスーハにサイードは惹かれる。 だがその直後、サイードは自爆志願者を募るパレスチナ人組織のジャマルに「君とハーレドが自爆攻撃の遂行者に選ばれた」と告げられる。 しかも実行日は翌日。今回の作戦は仲間が暗殺された事への報復として、何ヶ月にも亘る準備の上、遂行される事が決まったのだった。 あまりに急な事に呆然とするサイードだったが、一方のハーレドは自分たちが殉教者になるということで、妙に浮かれた様子だった。 殉教者としての最後の言葉をビデオで撮った後、髪を切り、髭も剃られ、ぱりっとしたスーツに身を包んだ二人の体に、爆弾が巻かれる。 爆弾には暗号コードが入力され、自分では取り外せないようにセッティングされている。 そしていよいよ、国境のフェンスの破れ目から二人はイスラエルに潜入した。ところがそこに、イスラエル警察の車両が近づいてくる。 あわててパレスチナ側に逃げ戻る二人。だが逃げる途中二人はばらばらにはぐれてしまう。 先にアジトに戻ったハーレドは、仲間と共にサイードを待つが、なかなか戻らないサイードの裏切りを恐れた幹部は、アジトを解散する。 そのころサイードは、ハーレド探し、街のあちこちを歩き回っていた。 監督のハニ・アブ・アサドはイスラエル生まれのパレスチナ人で、後にオランダに渡り、オランダのテレビ業界でドキュメンタリー番組などの制作を経て、映画を作り始めた人だそうだ。 私はイスラエルに住んでるパレスチナ人がいるという事も監督に関するこの記事を読んで初めて知ったし、スーハがスカーフも被らず街を歩き廻る姿にもびっくりした。 私の中には、パレスチナ=自爆攻撃=アラブの過激派=イスラム原理主義という思い込みがあって、だから女性は必ず頭にスカーフをしなければならないのだと思っていたが、パレスチナにおいては、必ずしも過激派の勢力が強いわけではなく、過激派=原理主義者というわけでもないという事がこの映画を観てわかった。 相変わらずの物知らずぶりに我ながら呆れると同時に、映画を観る事で知る事は多いし、やはりいろいろな国の映画を観る事は必要だと再認識した。 とにかく今回のようなテーマで映画を作った人はいなかったし、このような映画を公開すれば物議を醸すだろうということは十分予想できただろうが、そんな中でもあえてこのようなテーマに挑んだ関係者の勇気にも感服した。 映画は恐怖と貧困のうちに日々を送り、どうにもならない無力感に苛まれる若者たちにとって、自爆攻撃で殉教者になることが生きた証であり、この閉塞状態を切り開く唯一の道であるといった考えが広がっているパレスチナの現状を物語る。 そういった若者たちに感情移入してしまうのは間違っていると思うものの、状況がそういった若者たちを生み出している事も否めない。 自爆攻撃で身内を失った人々にしてみてば、このような映画が作られること自体許し難いことかもしれないし、この映画に反対する人たちは、映画を観た観客が自爆攻撃を肯定するのを恐れているのかもしれないが、この映画が自爆攻撃を肯定している訳ではないのは観ればわかることだ。 自爆攻撃がテーマの作品だが、爆弾が爆発することもないし、暴力的なシーンは全くない。 それでもサイードが自らの体に爆弾を巻いて街を彷徨うシーンは非常にスリリングだ。 しかもそのような状況で生き続けてきたサイードやハーレドのような若者と、ヨーロッパで教育を受けたスーハとは全く意見を異にしており、最初は殉教者になることに高揚感を感じていたハーレドがスーハと話し合う内に自爆することにためらいを感じるようになり、逆に自爆に疑問を感じていたサイードが、街を彷徨ううちに殉教者になる決心を固めていくという逆転が起きる。 サイードの父親は密告者として処刑されているのだが、密告せざるを得ないような状況がパレスチナにはあり、サイードは自爆攻撃をし続ける事が状況を変える唯一の方法だと思い、一人イスラエルに赴く。 この映画の公式ホームページに対談コーナーがあって、その中の74年にパレスチナに渡り日本赤軍に参加した足立正生監督とアサド監督の対談で、72年のイスラエルのテルアビブ空港の事件について語っている部分があって、その中でアサド監督が「大事だったことは、私たちパレスチナ人は20年以上も占領下にあって、誰も自分たちのために闘う用意がなかったわけです。まず、PLO(パレスチナ解放機構)が立ち上がり、それから日本赤軍が来て私たちの解放のために闘ってくれました。1972年のリッダ作戦(テルアビブ・ロッド空港事件/アラビア語の発音はリッダ)です。少年だった私たちにとって、日本赤軍はヒーローでした。学校で、ひそかに「僕たちも勇気を持たなければ!」と言うようになりました。なぜなら、日本のような物質に恵まれた豊かな国の人たちが、その生活を捨てて、私たちのために死にに来てくれたのですから。多くのパレスチナ人は自分たちがパレスチナ人だと言うことさえ恐れていましたが、勇気を持って、自分たちはパレスチナ人だと言うようになりました。占領下の暮らしぶりや、自分たちの権利などについて語り始めました。あなた方が私たちの意識を変えてくれたのです。これは、とても重要なことです。あなた方のような日本人が!!とても感謝しているのです。ほんとうに、いつだって感謝しているのです。」と語っているのを読んで、非常に驚いた。 あの時日本では、「なんで日本人がわざわざイスラエルにまで行って、テロなど起こすんだ」というのが大方のムードだったが、パレスチナ人が全く違った捉え方をしていた事がわかって衝撃だった。 足立監督によると、アメリカやヨーロッパでは自爆をテロとは書かず、そう書いているのは日本だけだという話で、自爆は強大な軍事力を持つイスラエルに対して軍事力のないパレスチナが行う戦闘行動だというのだ。アサド監督自身は自爆攻撃には賛成、反対どちらも支持するつもりはないという。 撮影は実際にイスラエルの占領地ナブレスで行われ、イスラエル軍の爆撃で近所の人が亡くなったり、銃撃戦のために3時間も床に伏せていたり、ロケーションマネージャーが誘拐されたりといった、非常に危険な状況で続けられた。それでも監督は実際に起こった場所で撮影することにこだわっている。 この映画はアメリカやヨーロッパの大作映画のようにお金は掛けてはいないものの、お金では購えない、信念といったものを掛けて作られ、強いメッセージを世界に放っている。 題名の「パラダイス・ナウ」とはパラダイス=来世、ナウ=現世という意味で、現世と来世が共存する自爆という行為の複雑性を反映しているそうだ。
by chiesan2006
| 2008-03-25 22:47
| 映画
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