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2011年 06月 12日
何年か前に話題になったカズオ・イシグロの同名小説の映画化。原作は話題になった頃に読んだ。 プロデューサーにイシグロ氏自身が加わって撮られた作品故に、原作にはかなり忠実に作られている、と思う。 たぶん、予備知識なしにこの映画を観た人は、後半になって話が意外な方向に展開して驚いたのではないだろうか。 原作を読んだ時の私がそうだった。 なにしろ最初は、孤児の少女が介護士になるヒューマンドラマ、みたいなつもりで読んでいたのだが・・・。 まあそういったドラマにしてはなんだかおかしい、と思われる箇所があちこち散見しはするのだが、後半になるとジョージ・オーウェル風近未来小説的な展開になって、登場人物たちが実は非常に苛酷な運命に晒されている事が判明する。 そこで、見ている、あるいは読んでいる側は否応なく頭のチャンネルを切り替えざるを得なくなる。 といっても、物語はあくまで淡々と進んでいく。 そこには一人の男子を巡る、親友同士の女子の対立という、青春ドラマにありがちな挿話もある。 ところが後半になってこのドラマの核心とも言える事実が明かされると、そのありがちな挿話さえ微妙な色合いを帯びてくる。 この原作が話題になった当時、作家の佐藤亜紀は、世間では概ね好評だったこの小説をけちょんけちょんに貶したが、その気持ちもわからなくはない。 先にあげたジョージ・オーウェルは60年代に20年くらい後の空想の世界を描いて全体主義の恐ろしさを告発したけれど、この物語は1970年代から20年間くらいに亘るイギリスにおける出来事と、年代も場所も特定しているのに、リアリティのなさはジョージ・オーウェルに匹敵する。 それどころか、オーウェルの描く全体主義の世界は、人間の歴史を見た場合この小説の世界よりずっとリアルに響いてくる。 でも、この小説はどうだろう。まして時代も国も特定してしまっていることに何の意味があるのだろう。 佐藤亜紀はヨーロッパを舞台にした小説をたくさん書いているけれど、該博な知識に裏打ちされたその物語の世界は細部にいたるまで非常にリアルだ。 でもイシグロは時代も国も特定しているにもかかわらず、リアリティには全く頓着していない。 佐藤亜紀の小説の主人公たちはクールだけれど闊達で、黙って運命に身を任せたりはしない。 中にはなにやら特殊な能力を身につけている登場人物たちも多く、物語の中でその能力を如何なく発揮する。 佐藤亜紀はリアルな世界に非現実的な人間を投入して動かすのが好きな作家だが、それに対しイシグロは、一見現実の世界のようでいて実は現実と非現実の境界が曖昧な世界に、現実世界と等身大なリアルな人間を投入して動かすのが好きな作家だと私には思える。 この二人は双方とも非現実的な世界を描く作家という点で共通点はあるものの、そのスタンスにはかなりの隔たりがある。 佐藤亜紀は自身のブログで、この小説を細部に亘っていろいろ批判しているが、多くの時間と労力を掛けて時代考証を行い、過酷な状況下であっても運命を切り開こうとする登場人物を好む佐藤亜紀には、もやもやっとしたこのカズオ・イシグロの世界観は、受け入れ難いものがあるのかもしれない。 人間に対する期待度の違いとでもいうのか・・・。 この小説を読んだ時、私はイシグロの小説はまだ「日の名残」一冊しか読んだ事がなく、あの小説のリアルで静謐な世界感に比べ、この小説の非現実的な世界観にはなんとも違和感を感じたものだった。 ところが、その後この人の小説を何冊か読んでみた結果、この人が全然リアルに拘る作家ではない、と言うことが判った。 それどころか長編4作目の「充たされざる者」では、中欧のどことも知れない国で、正にカフカ的迷宮の世界が展開されているし、「浮世の画家」は戦後の日本が舞台の物語でありながら、そこに描かれる日本はあくまで幼少期を日本で過ごした著者の記憶から生み出された世界であり、イシグロという日本名の作家の作品でありながら、日本人が読むと不思議な感慨に陥る小説だったし、また、二つの大戦の間の上海とイギリスが舞台の「わたしたちが孤児だったころ」は、物語られる出来事が果たして現実に起こったことなのか、はたまた主人公の思い込みの産物なのかが非常に曖昧な、これまた変わった趣の小説だった。 そう考えてみると、イシグロ氏の名前を世界的に知らしめた「日の名残」でさえ、もしかしたらそれほどリアルに拘って書かれていないのではないかと思えてしまう。 この小説を書いたときイシグロ氏は30代半ば。しかも日系人でありながら英国の老執事の回想録とは・・・。 「浮世の画家」のリアリティが日本人でなければ判らないのと同様、英国の執事を巡る物語のリアリティなんて、英国人にだって判る人は少ないはず。 もちろん小説である以上リアルに拘る必要はないけれども、イシグロの場合、場所や年代をリアルに特定していながらリアルに拘っていない所が特徴的だ。 今回の作品だって、架空の国の話としても成り立つと思うが、あえてイギリスとしている。 オーウェルが告発する全体主義の社会というのは、現実にもありうるが、先進国の中でも人一倍人権には神経質と思われるイギリスで、このドラマのような事態は到底おこりそうもないが・・。 そういった点に眼が向いてしまうと、カズオ・イシグロの物語は些か興ざめになってしまうのだ。 この人の小説を読むときには、それが持ち味と思って受け入れてしまうしかない。 話が小説にそれてしまったが、映画では主人公の3人をキャリー・マリガン、キーラ・ナイトレイ、アンドリュー・ガーフィールドという昨今注目の若手演技派俳優を起用し、脇にシャーロット・ランプリングなどの大物女優を配し、さっきも書いたように原作に忠実な手堅い演出で撮っている。 この映画を撮ったマーク・ロマネクという人は、ミュージック・ビデオ業界ではかなりの大物らしく、それだけに今回の映画でも、英国の伝統的な寄宿学校の雰囲気や田園風景が美しく撮られている。 本作で取り上げられているテーマは世間の関心も高く、同様のテーマを扱った小説や映画も多い。 ただ、ここまで粛々と運命を受け入れてしまう物語はちょっと珍しい。 そういうところがイシグロ的であり、佐藤亜紀をいらだたせてしまう所以なのかもしれないが・・・。 これ以上書くとネタばれになってしまうのでこの辺で。 ※下記の広告はExciteの営業活動の一環として掲載されるもので、主催者が載せているものではありません
by chiesan2006
| 2011-06-12 23:15
| 映画
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