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2007年 03月 06日
まるで「ジキルとハイド」のような題名だが、全く違う。副題が「世界最高の辞書OED(オックスフォード英語大辞典)の誕生秘話」という一見硬そうな内容の本。といっても読んで退屈することは全然ない。なにしろ秘話なんだから。
MARCデータベースによる内容の説明は「完成までに70年もの歳月が費やされた「オックスフォード英語大辞典」(OED)第1版。その作成に生涯を捧げた、ジェームズ・マレー博士と謎の協力者ウィリアム・マイナーの知られざる苦闘と悲劇、奇想天外な物語。」とある。 辞典編纂の中心人物のマレー博士は、貧しいながらも独学で多くの言語を身に付け、やがてイギリス言語学界の第一人者になった人なのだが、その協力者のマイナー氏の数奇な運命には本当に驚かされるし、なによりこの物語の19世紀末から20世紀の初頭の歴史的な背景がとても興味深い。それに辞典そのものの編纂も読んでいるだけでが目眩がしそうな位大変な作業なのだ。 まず、無償の篤志家いわゆるボランティアを募って12世紀頃から18世紀までの間に出版された英語で書かれた文献をすべて読み、そこから単語をリストアップし、単語の意味を説明する際に有用な例文も拾い出してもらう。さらにロンドンとニューヨークの新聞にくまなく目を通し、雑誌や定期刊行物のうち文学的なものを綿密に調べる。そして彼らから送られて来る天文学的な数量の単語シートを元に編纂作業を進めていくという気が遠くなるような作業の果て、70年掛かって作られた。そしてそのボランティアのなかで最も貢献したのが、マイナー氏だった。 ここからはなるべく本を読んでもらった方が良いけれど、読まない人のためにネタばれします。 マイナー氏の単語カードは、オックスフォードからさほど遠くないクローソンという村から送られて来る。それほど辞典の編纂に興味があるのなら直に訪ねて来てもよさそうなものなのにとマレー博士は思うのだけれど、それには思いもかけない事情があった。マイナー氏は精神疾患により罪を犯し病院に収監されている精神病患者だったのだ。 このマイナー氏という人物はアメリカの裕福な家庭で育ち、長じてからは非常に優秀な外科医になる。時は正にアメリカ南北戦争の真っ最中。マイナー氏は北軍に医師として志願し最前線で働く。 この本を読んで初めて知ったのだけれど、南北戦争のころのアメリカ国民というのは今のように愛国心に燃えていたと言う訳ではなく、戦時に一丸となって敵に立ち向かった訳ではなかったらしい。その証拠に南北両軍ともにおびただしい脱走兵を出した。 そう言われて見ると、マーティン・スコセッシの「ギャング・オブ・ニューヨーク」では、アメリカに着いたばかりの、まだアメリカ国民ともいえないようなポーランド人をその場で徴募して、どんどん南北戦争に送り出していたし、「コールド・マウンテン」のジュード・ロウは脱走して故郷に逃げ帰ってしまった。 当時は大量の近代兵器が使われ始めたにも関わらず、医療がそれに追いついていなくて、野戦病院は目覆うような状態だったらしい。脱走の大きな原因が、野戦病院のそんな悲惨な状況にあった事は疑いようが無い。 来る日も来る日もそこで働き続け、挙句に脱走兵の頬に焼き印を押す役目まで押し付けられたマイナー氏は、とうとう少しおかしくなって、軍を除隊しアメリカからも逃げ出してイギリスに渡る。 しかしそこでも病気は悪化の一途をたどり、妄想に駆られて全然無関係のない人間を殺してしまう。やがて裁判が行われるが、判決で犯行は精神の病が原因とされ、専門の病院に収監される事になる。 この時代に既にイギリスでは精神の病による犯行は普通の犯罪とは区別されていたという事が驚きだった。しかも、収監された病院の環境は決して悪いものでなく、マイナー氏はかなり手厚く遇される。病院の中には本が豊富にあるし、マイナー氏はそれを自由に利用する事が出来、そこでOEDの編纂とそれに関わるボランティアの事を知りそれに参加することにする。なんといってもマイナー氏は高い教育と知性の持ち主であったし、何より勤勉な性格で、病院に収監されていても何らかの形で社会に貢献できるという事が喜びでもあったのだ。 しかし、平素は全く正常に見えるマイナー氏だったが夜になると激しい妄想に悩まされ、特に性的な妄想が激しく、当時は有効な治療法もなく病気は一向に快方に向かう様子がなかった。そして、ある日マイナー氏は自分自身の体にとんでもない事をしてしまうのだった。 19世紀の精神医学では解明されなかったマイナー氏の病名は20世紀に入ってから精神分裂症と診断される。そんな病状の中、マイナー氏はマレー博士の元に30年間にわたって単語カードを送り続ける。 収録語数41万4825語のOED第1版の最大の功労者の全く対照的な二人の人物の数奇で壮絶な物語。良く知らなかった当時の歴史的な事も知る事が出来て、とっても面白うございました。
by chiesan2006
| 2007-03-06 03:02
| 本
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