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2007年 12月 19日
前回紹介した映画の原作本。
訳者の青野聰さんがあとがきに「これこそがアメリカだ。生きている本当のアメリカがここにある―というのが読んだときの感想だ」と書かれているけど、私の感想は「なんてアメリカ的な読み物だろう」といった感じだった。 映画は大筋において原作を踏襲しているけれど、ディテールはかなり違う。 映画もずいぶん変わった色合いの作品だと思ったけれど、原作に比べればずいぶんマイルドだった。 特に驚いたのは、映画では匂わせる程度にしか描かれていなかった、オーガステンとニール・ブックマンとの性描写。 14歳の少年が32歳の男にされた事を、作者であり主人公のオーガスティンは感覚と感情の両面で、実に生々しく描いているのだ。 読んでいて、こんな本が74週も「ニューヨーク・タイムズ」のベストセラーリストに載るなんて、いかにもアメリカ的だと思った。 もっともこの本が売れた原因が、そんな所にあるわけではないのは読み進んでいるうちにしだいにわかってきたのだが・・・。 極めて特異な環境で生きていかざるを得なかった少年が、あっぷあっぷしながらもなんとか成長していく様が少年の視点で克明に描かれている本作は、生きるためのヒントみたいな事が、そこここに読み取れるのだ。 飯島愛の「プラトニック・セックス」の少年版みたいな話だが、本屋で立ち読みして読み終わっちゃう「プラトニック・セックス」に比べ、何倍も読み応えがある。 もともと自分はゲイではないかと思っていたとはいえ、大の大人にとんでもない事をされたオーガステンの、ブックマンに対する感情は複雑で、愛情と嫌悪感がごちゃまぜなのだが、そんな二人の関係を母親と世話になっている精神科医のドクター・フィンチに打ち明けたところ、二人とも平然と肯定してしまうのだ。 子ども扱いされたくないと思ってはいても、まだ14歳のオーガステンは、こういった大人の反応に非常にとまどう。 作中でオーガステンは何度も、自分のおかれた環境とそこで生きる人々を「まともじゃない」とか「ズレてる」と言うのだが、そのように感じられるオーガスティンは、こんなひどい環境のなかで育っていながら、奇跡的に健全な心の持ち主だといえる。当の本人たちは、自分たちがおかしいなんて全然思ってないんだから。 映画の中で、ドクターフィンチが自分のウ○チの勢いがいいのを見て大喜びし、これからは運が上向くとか言うのでみんなでウ○チを覗くシーンがある。 それだけだって相当変だと思うのだが、原作ではそのウ○チをフィンチ家の長女のホープがおたまですくって、庭のテーブルの上で乾かすのだ。 それから家の天井が低いのが鬱陶しいと、オーガステンと次女のナタリーが穴を開けるシーンは、実は穴どころではなく天井を全部ぶち抜いて台所が漆喰の山になってしまうのだが、誰一人気にする様子もない。それどころか、二人がいい加減に作った天窓から雨や雪が降るので、冬は家の中で防寒着を着て生活する。 これが実話だというのだから恐れ入る。かなり脚色があるのではないかと思うけれど、登場人物の多くがまだ健在にもかかわらず、訴訟沙汰などにはなっていないようなので、あながち嘘でもないのだろう。 とにかく保護してくれるはずの大人が、けたはずれの変人ばかりの環境で、オーガステンはなんとかかんとか手探りで生きる術を身に着けていく。 その際たるものが、毎日何時間も書き続ける日記。 オーガスティンの母親が、詩人になるという夢を捨てきれず、書く事に固執して正気を失っていくのに対し、オーガステンは逆に書く事で正気を保つ。なんとも皮肉な話だ。とはいえ、書くことへの執着は間違いなく母親から受け継いだものなのだろうが。 そしてもう一つ、オーガステンの救いになっているのが、フィンチ家の次女のナタリー。 ナタリーは13歳の時に42歳の男と同棲するが、その時も父親のドクター・フィンチは何も言わない。 ところが、ナタリーが相手の男にDVされ、ぼろぼろになって戻ってくると早速訴訟を起こし、勝ち取ったお金をさっさと自分のものにしてしまう。 同病相哀れむって訳でもないだろうが、同い年のオーガステンとナタリーはうまが合い、しょっちゅう一緒に行動する。 「なにかを追っかけてるようにかんじることはない?なにか大きなものを。わかんないけど、なにかあんたとあたしにだけしかみえてないもの、みたいなんだ。それを追っかけてんの、走って、走って、走って」 「そうだね。ぼくたちは確かに走ってる。ハサミを持って突っ走ってる」 こんな環境の中で、年中羽目をはずし、しばしば傷つき、時に落ち込み、そのうち諦め、大人顔負けに世の中を達観したりしながらオーガスティンは成長していく。 そして、ある日突然ブックマンが去る。 さらに、母親がドクターフィンチに治療と称してレイプされていたと告白されるに及んで、フィンチをかばうナタリーとも亀裂が生じる。 やがてオーガステンは、かねてから憧れのニューヨークに行く決心をする。 「もちろんニューヨークでやっていけるさ。マサチューセッツ、ノーサンプトンのフィンチ家の生活よりもニューヨークのほうが狂ってるなんてことはありえない。ぼくは生き抜いてきたんだ。はからずも、サバイバルの博士号を獲得したんだ。」 原作には、映画のような感動のラストシーンはない。 「あるテレビ番組のオープニングにこういうシーンがあった。主人公の女性がスーパーマーケットにいて通路を急いでる。肉のケースのところで立ちどまると彼女はステーキを取りあげて値段を確かめる。それから目をむいて肩をすくめ、それをカートに放りこむ。 ぼくの感じもそのようなものだ。もしちがう生き方があったのなら、そのほうがよかったかもしれない。しかし目をむいて肩をすくめる以外、なにができるんだろう。 ぼくは肉をカートに投げ入れ、先に進む。」 特異な環境で生きた人間は、いい物書きになるんだね。
by chiesan2006
| 2007-12-19 23:31
| 本
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