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2008年 04月 18日
小説を映画化した時、映画がその小説の水準に達していないと感じる人は多いのではないかと思うけれど、本作に関してはその懸念は無用だった。前作「プライドと偏見」でもジェーン・オースティンの19世紀的世界観を巧みに映像に反映したジョー・ライト監督の手腕は、この映画でも遺憾なく発揮されている。 映画の内容は原作に忠実で、去年5月のブログ「贖罪」とほぼ同じ。 映画が小説より優れた効果を挙げられるとしたら、それは視覚的な面からの場合が多いだろうけれど、この作品も冒頭からその映像の美しさにまず圧倒される。 小説では裕福な中産階級として描かれているタリス一家だが、その邸は日本的な基準に照らしたら家というより正に城といっていいような概観を呈している。 そして服装やインテリアにも表れる、20世紀前半の有産階級の人々の優雅な暮らしぶり。 このような外国のコスチューム映画特有の映像美に加え、この映画でさらに効果的だったのは、その印象的な音の使い方。 主人公のブライオニーがたたくタイプライターの音、窓の外を飛ぶうるさいまでの蜂の羽音、それに被さるように流れるピアノの旋律。 それらの音の生み出す効果が、この映画になんともいえない繊細さを与え、独特の雰囲気を醸しだしているのだ。 しかもそれら視覚的、音響的効果に加え、廊下を直角に曲がるブライオニーの歩き方や、異常に早口なセシーリアの口調といった細かい演出が、観客をさらにこの物語の中に引き込んでいく。 そして間違いなくこの映画の最重要な登場人物、少女期のブライオニーを演じたシアーシャ・ローナンの、初々しいながらも大人たちを凌ぐ素晴らしい演技。 他の主要な俳優が殆どイギリス人なのに対し、ニューヨーク生まれのシアーシャがここまでイギリス的な少女を演じてしまうなんて、ただただ感心するしかない。 シアーシャはアカデミー助演女優賞にノミネートされたが、賞は「フィクサー」のティルダ・スウィントンに持っていかれてしまい、(それにケイト・ブランシュエットもノミネートされていた)残念な結果に終わったものの、演技はティルダに劣らず素晴らしかったと私は思った。 ところで、この映画に些か物足りない点があるとしたら、それは小説の中でマキューアンが非常に力を入れて描いている後半の戦争に関する描写で、監督のジョー・ライトはそれを有名なダンケルクの浜辺の長廻しシーンに集約してしまったが、小説にはそこに至るまでの長く苛烈な道のりの描写がある。 そのシーンの苛烈さを割愛して二人の仲間の兵士と海を目指すだけのシーンにしてしまったため、映画が中だるみした感が否めないのは非常に残念だ。それは監督が30万の兵士が救援を待つダンケルクのシークエンスに、観客の意識を集中させようとした故なのかもしれないが。 さらに小説では看護婦見習いとなったブライオニーの任務も映画より遥かに苛酷で、マキューアンが戦争の悲劇性を重く描いているのに対し、映画は小説以上にロビーとセシーリアの恋愛に重点が置かれているせいで、どちらかというと女性向きの映画といった趣が強くなってしまった。 わたしが観に行った日は女性サービスデイと言うこともあって、観客は女性ばかりで、映画のラストではあちこちですすり泣きが聞こえた(かく言う私も目頭がうるうるしたものの、一緒にいった友達の手前必死でこらえた)。 二人が引き裂かれたのは果たしてブライオニーだけの罪なのか。そこには戦争という抗いようのない時代の罪があったのではないか。 そんな状況の中で看護婦見習いになったブライオニー。それは時代の要請というよりも、夢を諦めることで自分を罰するためだったのではないのか。小説には作者のそういった意図が感じられたのだが・・。 しかしブライオニーにとって書くことは生きることと同義語であり、それ故ブライオニーは作家になることを宿命づけられている。 そんな女性が罪を犯したとき、それについて書かずにはいられないはずだ。だからこそマキューアンは作家が主人公の物語を書いたのだ。 この小説は文学作品としての水準を保ちながらも、ミステリー小説的なサスペンスも堪能できる稀有な作品だと思うのだが、その真骨頂ともいえるシーンが映画の最後でも忠実に再現されている。そのシーンで、著名な作家になったブライオニーを演じたベテラン女優のバネッサ・レッドグレーブの存在感は圧倒的だ。 人生の最後にブライオニーは自らの罪を小説に託して語るのだ。だが、それについて書くことは虚しい作業だった。贖罪のために書かれたその物語に、最早許しを与えてくれるものはないのである。 映画を観て感動した方は、是非とも小説も読むことをお奨めします。 ところでこの映画でロビーを演じたジェームズ・マカボイ。「ラスト・キング・オブ・スコットランド」で拷問に合う役を演じていたけれど、この映画でも苛酷な運命に翻弄される悲劇的な役を演じている。悲劇的な役柄というのはとかく人の注目を浴びやすいものだけれど、役柄のせいだけではない確かな演技力で、シアーシャ同様、様々な賞を受賞したもののアカデミー賞ではノミネートも逸した。私としては「スウィーニートッド」のジョニー・デップよりは、この人のほうが評価出来ると思ったのだけれどなあ。 ㊧小説「贖罪」の表紙 ㊨そっくりに撮られた映画のワンシーン
by chiesan2006
| 2008-04-18 23:44
| 映画
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