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2008年 04月 30日
この映画、アプトン・シンクレアという作家の「石油」という小説を元に作らているのだから、主人公は当然一鶴千金を狙って油田を掘り当てようとするのだけれど、この作品はそれ以上に孤独について語ろうとしている映画だと私には思えた。 しかも西部の荒涼とした風景といい、女性の登場人物が少ない設定といい、自分を騙した人間を簡単に粛清してしまう所といい、石油成金と無法者という違いはあるにせよ、数ヶ月前に観た「ジェシー・ジェイムズの暗殺」を思い起こさせた。 そう考えると、ダニエル・デイ・ルイスの演技は確かに素晴らしかったと思うものの、それに比してもそれほど遜色ないブラッド・ピッドの演技が、あまり賞の対象に推されなかったのは納得できないかなあとも思った。尤もブラピが無頼な役柄に挑むのが好きなのは「カリフォルニア」あたりから変わらずあったことだし、おまけにブラピは賞が欲しくてたまらないのが見ていて良くわかるのに対し、ダニエル・デイ・ルイスは賞などどこ吹く風で、平素は靴屋の修行などしているらしく、そのくせ久しぶりに映画に出てきたと思うと凄い演技をするという、映画に対するスタンスの差、というより作戦勝ち的な面もないではないとも思う。 もっとも賞が納得できないのは今に始まった事ではなく、20代の後半くらいから全く興味が持てなくなっていて、誰がどんな賞を取ろうが別にどうでもよかったのだけれど、ヴィゴ・モーテンセンファンの私としては、去年と今年、ヴィゴとヴィゴの出演作が賞の対象になる可能性があったので、気になってチェックしているだけのことなのだが。 話を元に戻すと、さらにこの映画の中で主人公の行動に重大な影響を与えるのに「家族」という要素があるのは見逃せない。 主人公のダニエルは、こと家族の話となるとそれが他の人にとっては些細なことに思えることにすら自制心をなくしてしまうのだ。 以下かなりネタばれのあらすじ 一匹狼の採掘師ダニエル・プレインビューは、金の採掘で稼いだ金を元手に、さらなる一鶴千金を夢見て、当時にわかに需要の高まった石油の採掘に乗り出し、見事に油田を掘り当てる。ところが、一緒に石油の掘削作業に従事していた仲間の一人が事故で死亡し、後に幼い息子が残される。 ダニエルはその子供を養子に向かえH・Wと名づけて一緒に連れ歩く。一匹狼のダニエルにとって、H・Wは唯一こころを慰めてくれる存在であると同時に、新な油田となるうる土地を確保する際、地主たちの心を開かせ交渉をやりやすくするための便利な存在でもあった。 だが、少年に成長したH・Wはある日油田のガス爆発が原因で、耳が聞こえなくなってしまう。 ちょうどその頃、弟のヘンリーだと名乗る人物がダニエルの前に現れる。 若い頃に家を出たダニエルは、腹違いの兄弟だと名乗るヘンリーに疑問を持つが、耳が聞こえなくなったせいで常軌を逸した行動を取るようになったH・Wを施設に預け、ヘンリーと組んで仕事をするようになる。 だがやがて嘘がばれ、ヘンリーが自分を騙していたと知るやダニエルは、なんの躊躇いもなくヘンリーを撃ち殺し、埋めてしまう。 そして施設のH・Wを連れ戻し、手話の家庭教師をつけ、今度こそ自分の息子として育てるのだった。 この映画、もう一人主要な人物が登場するのだが、それがポール・ダノ演じるポールとイーライという双子の兄弟だ。 始めにポールがダニエルを訪ね、自分の父親の土地が油田に有望だと持ちかけてくる。 半信半疑のダニエルが、H・Wを伴ってその土地を訪れると確かに地震で地割れした地面から石油が滲み出していた。 ダニエルはその土地を安く買い叩くが、代わりにポールの双子の兄イーライの主催する教会に寄付を申し出る。だが、教会でのイーライの、似非宗教家じみた奇態なふるまいを見て、ダニエルは心底うんざりさせられる。 しかもその後H・Wが事故に会ったため、自分には奇跡が行えると豪語するイーライに、それなら何故H・Wを助けられないのかと激しく罵倒し、泥水の中に叩き込む。 だがその後ダニエルはパイプラインに必要な土地を取得するために、やむを得ずイーライの教会の信者になるが、その際イーライに「私は神を信じる。私は息子を捨てた」と何度も叫ばされる。 この二人の確執は映画の最後まで続き、とうとう最後にダニエルはイーライを殺害する。 ダニエルと言う男は自分でも言うように人が信じられない上、自分の前に立ちはだかるものには容赦しない、非情な人間ではあるが、それはあくまでダニエルの一面で(大体人が自分に対して感じていることが当人の本質を付いている事は稀だ)、その心理の奥には、どうしようもない孤独感があるように感じられる。 物語の中の挿話で、大手の石油会社がダニエルが石油の採掘権を持つ土地を買収しようと交渉に来るシーンがある。 交渉人はダニエルに「そろそろ引退いして息子と一緒に暮らしたらどうだ」と持ちかける。 するとダニエルは、その石油会社との取引を止め、他の石油会社に土地を売ってしまうのだ。 後にその交渉人と再び会ったときダニエルは、「俺の家族の事で口出しをするな」と言うのである。 お互いに身寄りのないダニエルとH・Wは血の絆ならぬ石油の絆、いうなれば擬似的な血のような絆で結ばれているのだが、ダニエルはそれが血の絆と匹敵する、あるいはそれ以上のものであると思いたがっていたふしがある。 だが成長したH・Wはダニエルの元を離れる決心をし、ダニエルはその絆が本物の血の絆と同等にはなり得なかった事を悟る。というよりそのような思い込みが激しかったゆえ、H・Wの出したこの結論には耐えられなかったのだ。それ故ダニエルはH・Wに「おまえはバスケットに入っていた子供で俺の息子ではない」と言い放って放逐してしまうのだ。 そしてそこに折悪しくイーライが、ダニエルの尤も忌み嫌う似非宗教家のイーライが、かつてダニエルに会衆者の前で何度も「私は息子を捨てました」と叫ばせたイーライが、金の無心に訪れる。 思えばダニエルが過激な行動に出るとき、そこには必ず家族の問題が関わっている。ダニエルのこうした家族に関するコンプレックス、トラウマの原因は映画の中では語られていない。だがダニエルが欲望のままに富を求めて突っ走る心理の背後には、間違いなく家族の問題があると思われる。 「Ther will be blood」という題名が暗示するように、最後に自身が撲殺したイーライが流す血を見て、ダニエルは言う「I,m finished」。 H・Wが去った後、ダニエルにとって富はもはや何の意味も持たず、自分で自分を破滅に追い込む究極のエゴとして、ダニエルは宿敵の血を流したのかもしれない。 演出的には言いたいこともある映画ではあった。例えばイーライ役のポール・ダノのオーバーな演技(「キング・罪の王」や「リトル・ミス・サンシャイン」でもそうだったけどポール・ダノはこういう役どころにはまりつつある)とか、「パンチ・ドランク・ラブ」の時同様、ノイジーで神経にさわる音楽の使い方(部分的には効果的だと思ったが)とか、子供のころのH・Wとの関係が長尺に語られている割りに、大人になってからの関係が割愛されている点(そのためH・Wと袂を別つシーンの説得力がいまいちだった)とか、ポールとイーライがどっちがどっちか良くわからなかった点など。 しかしダニエル・デイ・ルイスのほとんど出ずっぱりなのにも関わらず、一瞬も目が離せないくらいの凄い演技に加え(ダニエル・デイ・ルイスの演技が秀逸な点は、シンプルで力強い演技の中にそういったダニエルの内面の寂寥感や痛々しさをも見事に表現してみせた所にあるのではないだろうか)、重厚で重層的なシナリオも撮影も良く、叙事詩的な大河ドラマとして非常に見ごたえのある映画であるのは、間違いないところでありました。
by chiesan2006
| 2008-04-30 19:09
| 映画
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