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2011年 07月 26日
(採点はあくまで私の主観に基づいていますので、私のレベルが低いせいで理解が及ばす、伸びない場合も多々ありますので悪しからず)
6月に観た映画 アジャストメント (劇場) アメリカ 70点 原作がフィリップ・K・ディックの短編小説で、監督は「オーシャンズ12」や「ボーン・アルティメイタム」の脚本を手掛け、本作が監督デビューとなるジョージ・ノルフィで、主演はマット・デイモン、競演がエミリー・ブラントと豪華メンバーなので期待して観に行ったのだが、肝心の人間の運命を操れるというテクノロジーを持った組織がなんだか間が抜けていてちっとも緊張感がなく、がっかりな映画だった。 ドラえもんのどこでもドアをパクったんじゃないかと思うようなドアを抜けて、あちこち逃げ回るシーンはちょっと面白かったが・・・。 英国王のスピーチ (劇場) イギリス・オーストラリア 85点 感想はこちらをご覧下さい。 シングルマン (DVD) アメリカ 80点 ファッションデザイナーのトム・フォードが撮った映画だけあって、前半は顔の一部をアップで撮るシーンが多様されていたりしてちょっとイメージビデオみたいな雰囲気があったが、後半はそういったシーンがなくなって却ってすっきりストーリーに入り込めた。 いつもはゲイの映画にはあまり共感出来ないのだけれど、繊細で緻密な心理描写とこの映画でアカデミー賞にノミネートされたコリン・ファースの熱演もあって、パートナーを失った主人公の孤独が胸に沁みた。 終盤で美青年に魅せられる様子は、「ベニスに死す」のダーク・ボガードを思わせる。 流石に監督がファッションデザイナーだけあって、ジュリアン・ムーアのドレスは素敵。 愛その他の悪霊について (DVD) コスタリカ・コロンビア 74点 ガルシア・マルケスの小説の映画化だが、劇場未公開。 呪術的な風土の中で、宗教的戒律に縛られた若い神父と、狂犬に襲われ悪霊に取り付かれたとされる美少女の禁断の恋が展開されるあたりは、いかにもマルケスらしい内容だった。 主役を演じた赤毛の美少女は、同じくマルケスの「エレンディラ」に主演したクラウディア・オハナを彷彿とさせた。 バッドルーテナント/刑事とドラッグとキリスト (DVD) アメリカ 77点 昨年ニコラス・ケイジ主演で公開された同名映画のオリジナル版。 どこかの映画評に、ハーベイ・カイテルの怪演は「ポゼッション」のイザベル・アジャーニに匹敵すると書いてあったので好奇心に駆られて借りてみたが、確かに怪演ではあるものの、アジャーニの憑依演技ほどではなかった。 この映画とにかくドラッグをやるシーンが多く、そんな摂取の仕方もあるのかと変なところで驚いたりしたが、後半になると話が意外な方向に展開する。 流石にハーベイ・カイテルの主演映画は一筋縄ではいかない。 フローズンリバー (DVD) アメリカ 84点 白人とインディアンの二人のシングルマザーの交流を描いた、ちょっと「グラントリノ」みたいな雰囲気のある映画で、最近観たなかでは一番惹き込まれた。 先日書いた「ザ・ファイター」でアカデミー助演女優賞を受賞したメリッサ・レオが、こちらでは主演女優賞にノミネートされている。 重い内容ではあるけれど、ラストは暗くならず、むしろ爽やか。 あと、主人公の新しい家に対する思い入れが激しい所にちょっとびっくりした。 あの夏の子供たち (DVD) フランス 76点 子供中心に描かれた映画というより、中心はむしろ映画の制作会社を経営する子供たちの父親で、映画制作の内幕ドラマとも言える映画。 自作のプロデューサーの自殺という監督の実体験から作られた映画だそうだが、主人公の自殺するシーンは、フランス映画にありがちな唐突感があってちょっと違和感があった。 長女を演じたアリス・ドゥ・ランクザンという女優さんは顔も綺麗だし演技も上手で、フランス映画界期待の新星といった感じだった。 クロッシング (DVD) アメリカ 77点 リチャード・ギア、イーサン・ホーク、ドン・チードルの3人が織り成す群像劇だが、題名の示すとおり、別々の事件を担当していた3人の刑事たちの運命が最後に交錯するという内容。 3人共に複雑な事情を抱えていて、特にイーサン・ホークが終始暗~い顔をしているので、観ているこっちまで暗~い気持ちにさせられる。 ラストに凄惨な銃撃戦が起こるが、助かるのはやっぱりあの人。 この映画でも、イーサン・ホークはやっぱり新しい家を持つことに異常な位こだわる。 ギャングスターNO1 (DVD) イギリス・ドイツ 76点 若き日の主人公をポール・ベタニー、年取ってからの主人公をマルコム・マクダウェルと二人の個性派俳優が演じているが、なんといってもポール・ベタニーの切れた演技が怖い。 マルコム・マクダウェルは変わった顔をしているせいか若い頃から変な役ばかりやらされていて、そのうちいなくなるかと思ったら今にいたるまで映画に出続けていて、良い意味で裏切られた。 いつも思うけど、イギリスのギャング映画って、アメリカのギャングより全然スタイリッシュで、それだけでも点数が何点か上がってしまう。 モンテクリスト伯 (DVD) イギリス・アイルランド 80点 デュマの小説は大好きだったから、この原作も「三銃士」と並んで中学生くらいの時に何回か読んだけれど、久しぶりにエドモン・ダンテスなんていう名前を聞いてぞくぞくした。 この映画は原作をいくらか脚色しているようだったけれど、そんなことは全然気にならずかなり楽しめた。 ダンテスを演じたジム・ガヴィーゼルと敵役のガイ・ピアース共に嵌り役で、ラストの決闘シーンも二人とも動きが良くて、流石一流の俳優は運動神経も半端じゃないと妙に感心しながら見入ってしまった。 特典映像にガヴィーゼルのインタビューがあったが、役の時とは全然違う静かな口調の人だったので、これにも驚いた。 タイムマシン (DVD) アメリカ 69点 こちらはガイ・ピアースの主演作で、死んだ恋人を生き返らせるために、80万年後の世界に行ってしまうのだけれど、HGウェルズの原作ってそんな内容だったけ?普通は過去に行くでしょうに。 大体、80万年もたったら、人類は今と同じ姿をしているかどうかわからないし・・。 だいぶお金はかけているようだが、残念ながら内容はB級映画と言わざるを得ない。 せっかくガイ・ピアース使っているのに。 6月に読んだ本 招かれざる客たちのビュッフェ クリスチアナ・ブランド 84点 「このミステリーがすごい」の20年間海外編の第6位となった作品。 566ページの中に16作品というショート・ショートといった感じの短編集なのだが、トリックにしろ心理描写にしろひとつひとつの完成度が高く、しかもブラックな雰囲気もあって、短編でありながらも本格ミステリーの醍醐味が味わえる。 日頃短編はちょっと苦手な私も、充分に楽しめた。 ナイトホークス 上下 マイクル・コナリー 86点 ロス市警の刑事ハリー・ボッシュシリーズの第1作目であり作者の処女作なのだそうだが、複雑に絡んだプロットや、主人公ボッシュの過去なども含んだ登場人物たちの巧みな人物造詣など、作者の今後の活躍を予感させるに足る内容となっている。 私はこのシリーズ、あちこち飛び飛びに読んでしまっているけれど、やっぱり時系列に読んだ方が面白いかも・・。 マルーシの巨像(電子書籍) 77点 友人の招きでフランスからギリシャに拠点を移したミラーが書いた、ギリシャ賛歌ともいえる紀行文。 ミラーの小説は「北回帰線」しか読んだ事がないが、言葉が爆発したようなその文体には大いに驚かされた。 それに比べるとこの本は読みやすいが、その分些か印象が薄い。 ミラーはアメリカを嫌悪しギリシャを賛美するが、文中のギリシャ人の中にはアメリカを羨む人々も多く登場する。 なんだか「他人の芝生は青く見える」という格言が頭を掠めた。 サバイバー チャック・パラニューク 80点 この人の本は初めて読んだけれど、取り上げられている題材といい語り口といい、なんだかとっても今風でアメリカ的な小説だった。 パラニュークは「ファイト・クラブ」が映画化されて有名になったが、こちらの小説のほうが完成度が高いという意見も。 いずれにしても、もう少し若い頃だったらいざ知らず、今の私には内容も文章もちょっと鼻に付く。 まあ、何冊か読んでみないとなんとも言えないけれど、好きな作家の分類には入りそうもない。 安徳天皇漂海記 宇月原 晴明 82点 日本の歴史小説はあまり読まないのだが、この本は歴史小説と言うより虚実とりまぜた南総里見八犬伝や山田風太郎風伝奇小説で面白かった。 この時代の歴史は学校で習った以外はNHKの大河ドラマ観る位しかなく、知らないも同然だったので、そういう意味でも興味深かった。 廃帝綺譚 宇月原 晴明 (電子書籍) 82点 上記の小説の続編だが、電子書籍として売られていたので買ってみた。 伝奇小説とはいえ、膨大な資料から得た知識に基づいて書かれいるらしく、時代考証もしっかりしていて読み応えがある。 もちろんファンタジーノベルとしても読めるので、一粒で二度おいしいみたいな小説だった。 退化の進化学 犬塚則久 79点 なるほどと思ってみたり、えーっと驚いてみたり、とにかく興味深いことがたくさん書いてある本なのだが、素人にも読めるとはいえ比較解剖学や形態学が基になっている本なので、生物の体の部位の名前やら図解やらがやたらと多く、読むのに凄く時間がかかった。 この本の性質上、やむを得ないのだろうが・・。 ただ、そういうのをさらっと流してエッセンスを感じ取るだけでも一読の価値はある。 ※下記の広告はExciteの営業活動の一環として掲載されるもので、主催者が載せているものではありません ■
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by chiesan2006
| 2011-07-26 19:18
| 映画と本
2011年 07月 11日
(採点はあくまで私の主観に基づいていますので、私のレベルが低いせいで理解が及ばす、伸びない場合も多々ありますので悪しからず)
5月に観た映画 おとうと (テレビ) 日本 70点 たぶん故意だと思うけど、山田洋二監督のアナクロ感満載の映画だった。(結婚式の前日のごちそうが鳥の丸焼きなのには参った。もしかしてオリジナルへのオマージュ?) つるべえはいろいろ受賞して確かに好演はしていたけれど、それ以外の脇役陣の方が印象に残った。(とくに弟の愛人役の女優さん) それにしても、日本独特の風習がてんこ盛りのこのような映画をベルリンで上映して、どんな訳がついたのだろう? ザ・ウォーカー (DVD) アメリカ 72点 正直言ってキリスト教徒でない人間、まして聖書も読んだ事がない私のような人間が見てもあまりぴんとこない。 主人公のイーライという名前の語源もよくわからないし。 有名俳優が出演するアクション映画以上の何かは感じられなかった。 久しぶりに映画でジェニファー・ビールスを見たのと、ゲイリー・オールドマンがまたいつもの役回りを演じていて、ああと思ったくらいかな。 マイ・ブラザー (DVD) アメリカ 77点 なんといってもアフガン戦争から帰って正気を失った兄役のトビー・マグワイアの熱演が見ものだが、戦地で冷酷な扱いをされて心が壊れたアメリカ兵の映画って、既視感が否めないし、アフガン人の描き方も雑だった。 娘役の10歳くらいの女の子が、大人顔負けの演技をして驚いた。大人に比べたら人生経験が全然少ない子供が、演技にここまで感情移入出来ちゃうなんて感動通り 越してちょっと気持ち悪いくらい。 カラバッジョ 天才画家の光と影 (DVD) イタリア・フランス・スペイン・ドイツ 75点 カラバッジョの本家本元のイタリアで作られた映画だけに、手堅い演出で映像も美しく、正に光と影の波乱の人生を送って夭折したカラバッジョの生涯を知るには最適の映画。 イタリア映画は時々観るけど主演の俳優は知らない人だった。 未見だけれど、デレク・ジャーマンの「カラバッジョ」と比較してみるのも面白いかも。 やさしい嘘と贈り物 (DVD) アメリカ 82点 ヒューマンドラマだけど最後にドンデン返しがあり、かなりおどろかされた。 主演が60年代の「スパイ大作戦」に出演していたマーティン・ランドーなのだが、おじいさんになってしまったなあ。 妻役のエレン・バースティンは流石の名演技だった。 家族にここまでしてもらえるなんて、主人公の老人は幸せ者だ。 脳内ニューヨーク (DVD) アメリカ 73点 「マルコヴィッチの穴」の脚本家の初監督作品なのだそうだが、かなりらしい作品ではある。 「マルコヴィッチの穴」は面白いという意見が多かったが、私はなんだか理屈っぽくって今ひとつ好きになれなかった。 この映画も似たような感じだ。 主演のフィリップ・シーモア・ホフマンは確かに名優だと思うが、時々鼻につくことがある。 冬の小鳥 (劇場) 韓国・フランス 79点 主演の少女は映画初出演なのだそうだが、その自然体の演技に驚かされる。 少女の目線で描かれているので父親役の俳優が、殆ど肩から下した写っていないところが面白かった。 とりたてて韓国映画のファンではないから良く判らないが、このような子供が主役の映画にもどこか怨念じみたものが感じられるのは韓国映画ならでは、なのではないだろうか。 最後に少し希望が見えるのには救われるが・・・。 ソフィアの夜明け (劇場) ブルガリア 77点 この映画は東京国際映画祭で注目されたのだそうだが、ブルガリアでは一年に数本しか映画がつくられないのだそうだ。 マイケル・ウィンターボトムあたりが撮りそうな社会派の青春映画といった趣の映画だが、なかなか見ごたえがあった。 日本にはあまり流れてこないブルガリアという国の状況などを垣間見る事も出来る。 主演のフリスト・フリストフという人は元々はアーティストでこれが映画初出演なのだそうだが、この映画の撮影終了直前に亡くなっている。 ブラックスワン (劇場) アメリカ 80点 感想はこちらをお読み下さい。 5月に読んだ本 プライマリーカラーズ/小説アメリカ大統領戦 アノニマス 81点 大統領の側近が主人公のアメリカ大統領選の内幕物で、当の大統領はクリントンを思わせる。 ほぼ一年間に亘る大統領戦の、紆余曲折する様が詳述されていて、ニュースなどでは知る事が出来なかった内幕がわかって面白い。 登場人物たちもそれぞれ個性的で、なかなか読み応えがあった。 アノニマスとは作者不詳の時に使われる俗称なのだそうだ。 Xのアーチ スティーヴ・エリクソン 76点 時代も場所も登場人物もあちこち飛ぶ上、過去の作品の登場人物なども絡んで話が錯綜し、かなりシュールな印象が否めない。 以前読んだ「黒い時計の旅」はなかなか面白く読めた記憶があるのだがこの小説は難解だった。 エリクソンを多く読み込んでいる読者は楽しめるのかもしれないが・・。 魔法 クルスとファー・プリースト 78点 これまた話が錯綜して、いかようにも解釈できる些か難解な小説だった。 トリックが複雑すぎてちょっとひとりよがりな感じがした上、そもそも「不可視人」という些か超能力者じみた人々が跋扈する内容からして、ちょっと好みから外れていた。 プリーストの作品は前回読んだ「奇術師」もかなりトリッキーな小説だったけれど、よりエンターテイメント性があって面白かった。 世界でいちばん美しい物語 「宇宙・生命・人類」 ユベール リーヴズ、イヴ コンパス、ジョエル ド・ロネー、 ドミニク シモネ 87点 原題は「世界で最も美しい歴史」というのだそうだ。れっきとした科学の本なのだが、フランスの出版物ともなると、題名までこじゃれている。 ジャーナリストでもある著者の、科学者へのインタビューという形式で書かれていて、私のような素人が読んでもわかりやすく、尚且つ宗教的な深遠さを感じさせられた。 科学の本を読むといつも、人間の営みのもろもろが何故か普段と違って見える。 千年の祈り イーユン・リー 82点 語り口は「その名にちなんで」のシュンパ・ラヒリに似ているが、こちらは時にヒューマンドラマ風であったり、歴史ドラマ風であったり、あるいは幻想的であったりと新人作家とは思えないイマジネーションに富んだ短編集。 母国語でない言葉で小説を書いて成功している作家は多いが、この人もそんな作家の一人だろう。 次回作も読んでみたい。 役にたたない日々 佐野洋子 95点 25年位前に出版されいまだに売れ続けている傑作絵本「100万回生きた猫」の作者で、昨年亡くなった佐野洋子さんが亡くなる直前に出版されたエッセイ集。 「100万回生きた猫」は出版されてすぐ位に読んで凄く感動し、今も持っている。 このエッセイも佐野さんらしいエッセンスに溢れ、役にたたないどころか読んで大いに励まされた。 思考解剖 小沢一郎 魚住 昭 (電子書籍) 81点 小沢一郎という政治家にはマイナスのイメージしか持ったことがないが、本当はどんな政治家なのか実の所良く判っていなかった。 この本を読んで、この人が何を目指しているのか少しわかった気がしたし、なるほどと思わされる面も少なからずあった。 だからといって、この人の手法を肯定する気にはいまだになれないが・・・。 本はボイジャーストアで売っているが、こちらにアクセスすると全文掲載されているもよう。 道理の前で 処刑の話 家のあるじとして気になること カフカ (電子書籍) 78点 青空文庫に収録されているカフカの短編をまとめ読みしてみた。 ショートショートといっても良いくらい短い作品なのだが、やはりカフカはカフカ。暗喩に富んだ不思議な世界観の作品たちだった。 青空文庫には「変身」などの長編も収録されているが、それらを読む前にちょっと読んでみると良いかも。 グランド・ブルテーシュ奇譚 バルザック 80点 近年次々と古典の新訳を発売している光文社から、バルザックの大作「人間喜劇」から抜粋した4作を収録して発売された短編集。 鋭い人間観察と精密な心理描写で有名なバルザックだが、今まで読んだことがなかった。 この本は4つの短編以外にも「書籍業の現状について」という評論や年譜なども掲載されていて、バルザックの入門書として読むには格好の一冊。 ※下記の広告はExciteの営業活動の一環として掲載されるもので、主催者が載せているものではありません ■
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by chiesan2006
| 2011-07-11 17:40
| 映画と本
2011年 05月 31日
(採点はあくまで私の主観に基づいていますので、私のレベルが低いせいで理解が及ばす、伸びない場合も多々ありますので悪しからず
2月 はやぶさ 7年60億kmのミッション 全解説 電子書籍 79点 ネットで電子書籍ソフトやコンテンツを配信しているVoyagerで売っていた本で、インタビュアーを交えた関係者の座談会を図や写真入りで掲載している。紙本では出版されていない。 とにかく関係者の生の声が読めて面白かった。表題には7年と書かれているが、打ち上げ前から足掛け15年くらいこのプロジェクトに関わっている人もいて、いつもの事ながら科学者の情熱と根気強さには頭が下がる。 抱擁(1)(2) アントニア・スーザン・バイアット 85点 グウェニス・パルトローとアーロン・エッカート主演の同名映画の原作本。映画を観た時から気になっていたのだけれどやっと読んだ。 ヴィクトリア朝と現代の二組のカップルの恋愛をシンクロさせながら描いていて、ミステリアスながらも格調高い。 映画では、ヴィクトリア朝の詩人の役を「英国王のスピーチ」でアカデミー賞を受賞したコリン・ファースが演じていた。 バーナム博物館 スティーヴン・ミルハウザー 83点 ミルハウザーの本を読むのは本書で2冊目で、前回は絵画、そして今回は情景が驚くばかりの緻密さで描かれていて、この作家の幻視力とそれに伴った筆力はとにかく凄い。 情景描写を読むのはあまり得意ではないのだけれど、この人の本を読んでいると、嫌でも眼前に絵や情景が浮かぶ。 柴田元幸氏の訳文も流石。 戦争の法 佐藤亜紀 80点 なんだかんだいいながらもまた読んじゃった佐藤亜紀。 ヨーロッパ好きの著者にしては珍しく日本が舞台の小説だけれど、着想はやっぱり奇想天外。これがデビュー2作目だそうだが、この後の作品に比べると主人公の性格がまだマイルド。 私はこの後の妙に気取った人たちが主人公の作品より、この頃の方が好きだな。 全貌ウィキリークス マルセル・ローゼンバッハ ホルガー・シュタルク 電子書籍 82点 昨年アメリカのトップシークレット級の外交文書をネット上ですっぱ抜いて話題になったウィキリークスの創始者、ジュリアン・アサンジ氏をドイツの二人の記者が密着取材して書いた本。 アサンジ氏の半生のみならず、すっぱ抜き文書のネタを提供した米軍の上等兵のことなどもかなり詳しく取材していて興味深かった。 これもVoyagerで紙本の3分の2くらいの値段で入手したのだけれど、紙本は400ページ以上の単行本で重そう。そこへいくとipod touchは軽くて良い。 カメラ ジャン・フィリップ・トゥーサン 84点 この人の作品はかなり前にデビュー作の「浴室」というのが話題になって読んだことがあるが、あまり印象に残っていない。 でもこの作品は、なげやりなようなひたむきなような曖昧な感じがどこかフランス的で、しかもちょっと癒される感じでなかなか良かった。 著者は映画も撮っているというだけあって、文章から情景も浮かび易い。 ベートーベン通りの死んだ鳩 サミュエル・フラー 85点 先月読んだ「脳髄震撼」がめちゃくちゃ面白かったのでまた読んでみたサミュエル・フラー作品。 今度のはドイツが舞台の探偵活劇。普通とは逆に映画を小説化したそうで、本国アメリカより先にフランスで出版されている。 どうやらフラーは悪女が好きなようで、こちらの小説にも魅力的な悪女が登場する。 「脳髄震撼」同様アナーキーでノワールな感じの小説だけれど、こちらの方がエンターテイメント性が強い。 3月 ドラッカー 時代を超える言葉 洞察力を鍛える160の英知 上田 惇生 電子書籍 75点 「もしドラ」も映画化されて最近話題のドラッカーだが、不勉強ながらこの人の著作は読んだ事がなかったので、この本をApp Storeで見つけて思わず買ってしまった。 この本はドラッカー研究の第一人者といわれる著者が、膨大なドラッカーの著作物からそのエッセンスを引き出してまとめた、いわばドラッカーの入門書ともいえる一冊。 でも、こういったら身も蓋もないけど、読み終わってしばらくしたら殆ど忘れてしまった。 日頃から私のような人間は自己啓発本を読んでも無駄と思っているが、こういう本は実践的に役立てようという気がない人間が読んでもあまり意味がないかも。 というより、エッセンスを汲み取って提示される形式の本って、普段からあんまり後に残らない。 ほんとうの私 ミラン・クンデラ 79点 クンデラは女性心理を書くのが巧みな作家だと思うのだが、この本にも、子供を亡くし、尚且つ自らの老いも感じ始めている女性の心理がクンデラならではの筆致で描かれている。 クンデラ独特の哲学的で思索的な文体は相変わらずだが、「存在の耐えられない軽さ」や「不滅」に比べると時代性やスケール感がなく印象が薄い感じが否めない。 そんなに読んでどうするの 縦横無尽のブックガイド 豊崎由美 85点 辛口の書評で知られる著者だが、読むのは今回が初めて。 辛口と言っても、この本で紹介されている作品は大部分好評価されており、特に外国文学は私の好みにぴったりの作品がたくさん紹介されていて嬉しくなった。 あと著作は読んだ事がないのだけれどH・T(って辻一成)と、J・W(こちらは渡辺純一)に関する超激辛評価が、日頃私が思っている事と重なって大いに頷いた。 貧困大国アメリカ 堤未果 83点 2年位前に話題になっていた本。やっと読んだ。 読んでいてマイケル・ムーアの映画「シッコ」を思い出した。 「シッコ」にしろこの本にしろ、確かにアメリカの一面を捉えていると思うが、だからって貧困大国とまで言えるかどうか・・。 ただ、従来のアメリカは伝統的に民主党>共和党だったらしいのだが、ここ30年くらいは共和党>民主党になっていて、保守的で小さい政府を目指す傾向、要するに自分のめんどうは自分でみろ、みたいな傾向になっているのは確かなことだろう。 次回の大統領戦では、一体どちらが政権を取るのだろうか。 人外魔境シリーズ 小栗虫太郎 電子書籍 79点 青空文庫に抜粋されていた「有尾人」「天母峰」「水棲人」「遊魂境」「地軸二万里」の5作品を読んでみた。 でも魔境なんていわれても「黒死館殺人事件」を読んじゃったら、あれ以上の読書的魔境体験は望めないんじゃないだろうか。 このシリーズ全部まとめたって、あの小説には敵わない。 4月 極端に短いインターネットの歴史 浜野保樹 電子書籍 80点 こちらもVoyagerで見つけた。 極端に短いと題されているが、そんなに短くはない。 さりとてくどくどしく長いわけでもなく、インターネットの歴史をざらっと知るにはちょうど良い長さ。 ご多分に漏れず、インターネットも最初は原爆という兵器の開発に密接に結びついている。 アメリカで産まれた新しい科学技術は特にその傾向が強い。 便利さの陰にアメリカの産軍複合体あり。 空気を読むな本を読め 小飼弾 電子書籍 74点 こちらもVoyagerで。 人気書評ブログの主催者である著者が自身の読書法を公開しているのだけれど、私にはあまり参考にならなかった。 いままであまり本を読んでなくてこれから読もうと思ってる人には良いかもしれないけど。 巻末のおすすめの100冊も、小説に関してはあまり興味を引かれる作品がなかった。 私にとっては「この本読むな、他の本読め」みたいな本だった。 きことわ 朝吹真理子 74点 今年の芥川賞受賞作。普段同賞には全く興味がないのだけれど、友達が貸してくれたから読んでみた。 選考委員の評判はかなりよかったようなのだが、文章が、よく言えば落ち着いている、悪く言えば年寄り臭くて、20代の作家が書いたとは思えないし、書かれている内容も希薄で3日もしたら忘れてしまいそう。美しく語られていれば良いってもんでもないよね。 高校生の綿矢りさの書いた「蹴りたい背中」(これも友達に借りた)の方が面白かった。 苦役列車 西村賢太 77点 自らを、今の時代冷遇されている私小説に拘る作家と位置づけているが、そのアナクロ感が計算なのかもしれないとも思わされる。 だっていまどき「苦役列車」なんて題名つけてること自体、なんらかの計算があるとしか思えない。 でも、そのアナクロ感の中に隠しきれない今風なかんじが見え隠れする所がちょっとおもしろくはあった。 「きことは」よりは面白い。 パレード 吉田修一 電子書籍 78点 昨年話題を呼んだ映画「悪人」の原作者が書いた本で、またVoyagerで購入した。 いまどきの若者たちの共同生活の様子が淡々と語られているちょっとクールな青春小説かとおもいきや、ラスト近くにびっくりの展開が待っている。 いくら今時の若者が何を考えているかわからないと言っても、それまでの展開に比べあまりに唐突で、私には上手く消化出来なかった。なんかちょっと人の度肝を抜こうというあざとさも感じられたし。 これで山本周五郎賞受賞って、う~ん?? 久生十蘭 短編 電子書籍 82点 青空文庫に集録されている「海豹島」「カラスキー氏の友情」「黒い手帳」「骨仏」「昆虫図」「肌色の月」「墓地展望亭」「水草」「黄泉から」の9編を読んだ。 長さが中篇に近いくらいのものから、ほんの数ページのものまで、内容もロマンス風から、ホラー風、推理小説風とバラエティに富んでいる。 中にはパリを舞台にしたヨーロッパの小国の王女と日本青年の恋愛譚まであって、いくらなんでも大風呂敷だなと苦笑したけど、この人の小説だったら許せる。 「ジュウラニアン」というニッチなファン集団がいるのも頷ける。 青空文庫では現在50作品ほどが公開に向けて作業中らしいので楽しみだ。 テレビジョン ジャン・フィリップ・トゥーサン 92点 なんだかフランスのコメディ映画を観ているみたいで、笑えて同時に癒された。 だからって俗な感じではなく、なかなか哲学的でもある。 スローライフを実践しているような主人公の生きかたは、トゥーサン自身が投影されているのだろうが、こんな生き方普通の人はなかなかできるもんじゃない。 せめてこの人の他の作品を読んで癒されよう。 ジャズ トニ・モリスン 78点 「ジャズの即興演奏のイメージで文章を書く」という試みで書かれた小説なのでかなり判り難いなどと言われているが、そもそもモリスンの小説ってどれも判り易くはないし、時代があちこちするのもいつものことなので、そのつもりで読めばそれなりに理解できる。 ただ誰ともわからない語り手によって語られるラスト部分はシュールな散文詩のようで、確かにかなり難解ではある。 塩一トンの読書 須賀敦子 84点 いろいろな書物について紹介されているが、書評というより読書日記といった趣の本。 須賀さん独特の柔らかいけれどどこか凛とした文章を読むと、いつも読んだ後ちょっと背筋が延びる感じがする。(でもすぐにまたぐんにゃりしちゃうけど) 「一人の人を理解するには、すくなくとも、一トンの塩を一緒に舐めなければだめ」とイタリア人のお姑さんが良く言っていたそうで、人を理解するのはそれくらい時間がかかるという喩なのだそうだ。 命の収獲 テス・ジェリッツェン 81点 最近本でも映画でも取り上げられる事が多い臓器移植を巡る医学サスペンス。 まあ、ありがちな展開で黒幕の正体も途中でうすうすわかってしまうのだけれど、何と言っても書いたのが女医さんということで、ディテールのリアリティなどはなかなか読みごたえがあった。 大丈夫とわかっていながらもちょっとドキドキするラストも秀逸。 ※下記の広告はExciteの営業活動の一環として掲載されるもので、主催者が載せているものではありません ■
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by chiesan2006
| 2011-05-31 16:15
| 映画と本
2011年 05月 10日
震災の後、報道番組を見たり、節電のために早く寝たりしていたので更新がすっかり滞ってしまいました。
その間もアクセスしたくださった方たち、どうもありがとうございました。 また、ぼちぼち頑張りますのでよろしくお願いします。 2月に観た映画 白と黒の恋人たち (劇場) フランス 78点 監督のフィリップ・ガレルの昔の恋人をモデルにした作品といわれている映画。 画面も出演者も美しいが、ミイラ取りがミイラになるみたいな内容で、怖い結末だった。 恋人たちの失われた革命 (劇場) フランス 75点 こちらもガレル監督の自伝的要素の強い映画で、青春の愛と挫折が描かれている。 主人公を監督の息子が演じて絶賛されたそうだ。 やはり画面と主役の二人は美しいが、序盤の革命に明け暮れるシーンが長い割には盛り上がりに欠け、ちょっと退屈だった。 ヤギと男と男と壁と (DVD) アメリカ 73点 もっと軽い感じのコメディかと思って借りて見たら、案外ブラックな味わいの映画だった。 イラク戦争をこんな風に扱ってしまうなんて、ちょっと微妙、と思えたけど・・・。 やさしくキスをして (DVD) イギリス・ベルギー・ドイツ 78点 巨匠ケン・ローチ監督が描く、アイルランド人女性とイスラム系移民男性の辛口のラブ・ストーリー。 無名の新人女優と演技初体験の男優を使って撮っているけど、とてもそんな風には思えない熱演。 私的には、女性がもう少し歩み寄ってもよさそうな気がしたが・・。 3月に観た映画 カティンの森 (DVD) ポーランド 79点 ポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督が史実に基づいて撮った映画。 第二次大戦中にドイツとソ連が手を組んでポーランドを分割占領してたなんて、この映画を見るまで知らなかった。 非常に重い内容でラストにも救いがないだけに、ずっしり心に残る。 闇の列車、光の旅 (DVD) メキシコ・アメリカ 76点 ホンジュラスからメキシコを経由してアメリカに不法入国しようとする少女に、メキシコ人ギャングの少年が絡んで淡い恋が生まれる。 というと聞こえは良いが、ギャング団に入団したばかりの10歳くらいの少年が、みるみるうちにギャングに変身していく様は見ていて空恐ろしかった。 光の旅と題されているものの、ラストに見えた光はあまりにも弱々しい。 亀も空を飛ぶ (劇場) イラク 採点不能 最終上映日に早稲田松竹に見に行ったら、30分くらい見たところで地震が来てしまい、残りを見損なった。 とても印象的な作品だったのに、現在DVDもレンタルされておらず、残りが見られなくて非常に残念。 どこかで上映してえ~。 4月に見た映画 倫敦から来た男 (DVD) ハンガリー・ドイツ・フランス 74点 一応ミステリー作家ジョルジュ・シムノンの小説が原作らしいのだが、白黒の画面でまったりと時間が流れる映像は、ユーモアのないアキ・カウリスマキ作品のようだった。 普段みているようなサスペンスドラマだと思って見ると期待はずれ。 抱擁のかけら (DVD) スペイン 73点 苦手と思いつつまた見てしまったアルモドバル作品。 アルモドバル組常連のペネロペ・クルス主演の三角関係のドラマなのだが、相手役の男性が二人とも年取っていて、ラブシーンはちょっとごめんなさいって感じだった。 くるくる衣装を変えて出てくるペネロペはとても美しかったけど・・・。 ルドandクルシ (DVD) メキシコ 74点 サッカー選手を主人公に人生の浮き沈みを描いたコメディドラマ。 ガエル・ガルシア・ベルナルが運動選手の役を演じているのが珍しい。といってもサッカーをしているシーンはあまりなかったが・・。 「天国の口、地上の楽園」以来の競演となるディエゴ・ルナは、以前より締まってかっこよくなった気が・・・。 ヴィクトリア女王 世紀の愛 (DVD) イギリス・アメリカ 74点 若きヴィクトリアを巡る宮廷ドラマ。 撮ったのはカナダの若手のジャン・マルク・バレと言う人。 ヴィクトリア女王を最近売れているエミリー・ブラントがそれなりに好演しているが、いかんせん女王になりたての18歳という年齢はちょっと・・。 この手の映画としては平凡な出来、かな。 私を離さないで (劇場) イギリス・アメリカ 77点 作家の佐藤亜紀に酷評されたカズオ・イシグロの同名小説の映画化。 何年か前に原作は読んだが、かなり忠実につくられている。制作にイシグロ氏本人が関わっているせいか? 原作を読んだ時にも思ったのだが、テーマはシリアスなのに設定にリアリティがないため、なんだか印象が中途半端。でも、カズオ・イシグロはリアリティーの作家じゃないからしょうがないんだけど。 俳優陣の演技は皆良かった。 ※下記の広告はExciteの営業活動の一環として掲載されるもので、主催者が載せているものではありません ■
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by chiesan2006
| 2011-05-10 01:02
| 映画と本
2011年 02月 26日
(採点はあくまで私の主観に基づいていますので、私のレベルが低いせいで理解が及ばす、伸びない場合も多々ありますので悪しからず)
1月に観た映画 その男ヴァンダム (DVD) ベルギー・フランス・ルクセンブルグ 77点 ジャンクロード・ヴァンダム本人が故郷の町で銀行強盗に巻き込まれるという設定から推して、てっきりコメディなのかと思ったが、コメディはコメディでもかなりブラックな味わいの映画だった。 途中、ヴァンダムが過去を振り返って独白するシーンはさながらドキュメンタリーのようで、もしあれが演技だとしたらヴァンダムの演技力も相当なものだと思えた。 ヴァンダムってフランス人だとばかり思っていたけれど、この映画を見てベルギー人だって初めて知った。 殺しの烙印(DVD) 日本 75点 昨年の暮れに読んだ鈴木清順のエッセイに、この映画のせいで日活をクビになったと書いてあったが、ファンの間では伝説のカルト・ムービーといわれる映画。 前半は殺し屋役の宍戸錠もカッコ良く、映像もスタイリッシュで、案外普通のギャング映画なのだが、後半になると話があらぬ方向に流れていって、正に清順ワールド が炸裂する。 性格俳優の南原宏治も、後半になるとその怪優ぶりを遺憾なく発揮する。 最近になって再評価されているようだが、公開当時は全く人が入らなかったらしい。 でも、この内容じゃ仕方なかったろうね。だって、普通の映画見慣れた人にはちんぷんかんぷんだろうし、当時はこういう映画を面白がれるマニアックな映画ファンもそれほどいなかっただろうし。 でも、それ以前に立て続けにヒット作を作っていながら突然こういった映画を撮ってしまうところが、流石に並の監督じゃない。 ザ・バンク 堕ちた巨像 (DVD) アメリカ・ドイツ・イギリス 73点 巨悪に立ち向かう孤高の捜査官というよくある図式ではあるものの、前半はかなりシリアスに話が展開して面白かった。 でも後半、美術館でいきなり銃撃戦が始まってしまってがっかり。 渋い社会派ドラマを期待している観客にとってはこれは無用な展開に思えたけれど、さりとてアクション映画が好きな人にとっては些か物足りないのではないかと思えるような、なんとも中途半端な映画だった。 監督のトム・テクバは「パフューム/ある人殺しの物語」が結構好きだっただけに、今回の映画はちょっと残念。 リミッツ・オブ・コントロール (DVD) アメリカ 76点 ストーリーがあってなきような映画で、正直ちょっと退屈だった。 ただ、ジム・ジャームッシュ監督はスペインを舞台に自分の好きな俳優を使って映画を撮りたかったんだろうなきっと、と思わされるようなショットも多かった。 ティルダ・スウィントン、ジョン・ハート、ガエル・ガルシア・マルケス、ビル・マーレーなどのアカデミー賞クラスの俳優が何人も配されているところも見所だった。(中に工藤夕貴が入っていたのはご愛嬌?) でもエンターテイメント性重視のアメリカ映画界の中で、エンターテイメントに捕らわれない映画を作り続けて、尚且つ多くの支持を集められるのは稀有な事だろう。 主演を演じた、「24」にも出演していたイザック・ド・バンコレの存在感は圧倒的。 明日へのチケット (DVD) イタリア・イギリス 74点 中東とヨーロッパの巨匠監督3人によるオムニバス形式の映画。 ローマに向かう長距離列車の中で起こる出来事をゆるいつながりで描いているのだが、私としては後半2作品の登場人物の列車の中のマナーの悪さが気になってしまって、それがかなり減点対象になってしまった。なんかうるさくって、生理的に受け付けないというか・・・。 名監督の作品なのに残念。 ソーシャルネットワーク (劇場) アメリカ 80点 猛烈な勢いでIT用語が連発されるので、最初は付いていくのが大変だった。 でも、語られているのは案外いつの時代にもあるような普遍的なことで、そのギャップが面白かった。 とにかく台詞が多いが、それが自然に聞こえるようにそれぞれのシーンを何十テイクも撮ったそうだ。 その成果が現れてか、主演のジェシー・アイゼンバーグと助演のアンドリュー・ガーフィールドは様々な賞にノミネートされた。 1月に読んだ本 青い眼が欲しい トニ・モリスン 83点 1970年前後には「Black is Beautiful」という標語が盛んに使われたものだが、これはそれ以前、黒人が白人の価値観でものを見ることを余儀なくされていた時代、それによって黒人が黒人を貶めてしまう様が、繊細な筆致で描かれている。 モリスンの処女長編だそうだが、後の「スーラ」や「ビラヴド」に見られるような抽象的な表現も少なく、却って読みやすい。 黒人の、それも女性の作家が書いた小説で日本に紹介されている作品はそう多くないので、それだけに今まで読んだ事がないような視点で物語が描かれていて考えさせられる。 脳髄震撼 サミュエル・フラー 84点 B級映画の巨匠であり作家でもある作者の3作目の長編小説だそうだが、私はこの監督の映画、もしかしたら若い頃にテレビで見たことがあるかもしれないが、全然記憶にない。 でもこの小説、題名のインパクトに負けない内容の、そこらのミステリー作家の作品なんか及びもつかないくらい面白い犯罪小説だった。 にもかかわらず、本国アメリカでは出版されず、フランスでのみ出版されているのだそうだ。もったいない話だ。 医者も原因がわからない脳の症状に悩まされる主人公がある女性に一目ぼれしてしまうのだが、半端ないその一途さが切ない余韻を残す。 刊頭にあるアル・カポネの言葉―「愛は運び屋を詩人もしくは狂人にする」―はこの小説の中味を端的に表していて、フラーの映画と小説をもっと見てみたいと思わされる。 それにしても、カポネって案外文学的素養があったのね。 マティス・ストーリーズ アントニア・スーザン・バイアット 82点 3枚のマティスの絵をモチーフにした、男女が繰り広げる人間模様を流麗な筆致で綴った短編集。 シニカルな中にも人間に対する優しさが感じられ、なにより絵を題材にしているだけに、視覚的な表現が鮮やかで、読んでいると目の前に色や情景が拡がってくる。 この人の小説は初めて読んだけれど、二人の妹も作家だそうで、現代のブロンテ姉妹と呼ばれているのだそうだ。 告白 湊かなえ 78点 昨年公開されて話題になった同名映画の原作本。 冒頭のホームルームでの女教師の告発シーンは映画のほうが強い印象を残すが、逆に犯人の一人である少年の母親の告白は原作の方がよりリアリティがあって理解しやすかったというように、映画と本、それぞれ一長一短あるが、基本的には映画は原作にかなり忠実に作られている。 いづれにしても、少年犯罪という取り上げるには難しいテーマをエンターテイメントという切り口で描いている点は共通していて、映画同様些か疑問の残るラストだった。 それにしてもこの作家、処女長編がこんなに爆発的に売れてしまって、この先一体何を書くんだろう。 ハロー ヨースタイン・ゴルデル 77点 作者は「ソフィの世界」を書いたヨースタイン・ゴルデル。 なんだかきも可愛い挿絵がたくさん入っていて、宇宙や進化や夢に関する考察などが子供でもわかる文章で書かれている。 が、内容は案外深く、大人が読んでも充分楽しめる。 路上 ジャック・ケルアック 73点 名作の呼び声高いが、私は以前読んだ「地下街の人びと」も含め、この人の小説はどうも苦手だ。 元来旅というのにあんまり興味がないせいもあるかもしれないが、主人公の、友人に引きづられているような主体性のなさがなんとも歯がゆい。 後半になるとヘンリー・ミラーを思わせるような散文的な文章がちりばめられ、それはそれで読み応えがあるが、生き様としては全然共感出来ない。 こんな小説読むんだったらヘンリー・ミラーを読んでるほうが良い。 老人のための残酷童話 倉橋由美子 79点 久しぶりに読んだ倉橋さんの小説。 齢を重ねても毒を含んだ文章で夢幻の世界を描く作風は相変わらずだが、「大人のための残酷童話」から20年後に書かれた本作は、やはり自身の年齢を意識して書かれているのだろうか。 登場する老人たちは年齢の割には皆どこか生臭いが、結局最後には恐ろしい結末を迎える点、なんとなく最近の老人たちへの警句のようにも読める。 若者に比べ老人の人口が圧倒的に多くなってしまい、メディアなどでも老人に対して辛口のコメントを言える人は少ない昨今、倉橋さんのような人にこそもっと長く生きて欲しかった。 魔女の一ダース 米原万理 81点 人間の常識では1ダースといえば12だが、魔女の世界の1ダースは13なのだそうだ。 副題に「正義と常識に冷や水を浴びせる13章 」とあるとおり、世界にはいろいろな常識があるという事を、読書による該博な知識と世界中を旅するロシア語通訳としての経験から検証していて、固定観念に縛られる事の愚かしさを痛感させられる。 米原さんの下ネタ好きも、実はロシアの影響らしい。 このような有能な人が早くに亡くなってしまうなんて、本当に残念だ。 ※下記の広告はExciteの営業活動の一環として掲載されるもので、主催者が載せているものではありません ■
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by chiesan2006
| 2011-02-26 03:57
| 映画と本
2011年 01月 13日
長い間更新しなかった映画と本の感想、3か月分まとめて更新しました。
(採点はあくまで私の主観に基づいていますので、私のレベルが低いせいで理解が及ばす、伸びない場合も多々ありますので悪しからず) 10月に観た映画 シャッター・アイランド (DVD) アメリカ 78点 デニス・ルヘインの小説の映画化。 原作を読んでいたのでラストには驚かなかったが、なんといってもデュカプリオの熱演が光った。 見る者の不安を掻き立てるようなスコセッシの演出も、原作の雰囲気を上手く捉えていた。 タイタンの戦い (DVD) アメリカ 70点 ギリシャ神話の中でも有名な、ペルセウスとアンドロメダの話だが、見るものを石に変えると言われる蛇の髪を持つメデューサの造詣がちゃちでがっかりした。 アバターですっかり顔が売れたサム・ワーシントンが主演だが、いまのところ出演作が特撮映画ばかりで、俳優としての実力がどのくらいあるのかはまだ良く判らない。 11月に観た映画 ラブリー・ボーン (DVD) アメリカ・イギリス・ニュージーランド 72点 「ロード・オブ・ザ・リング」以降、撮る作品があまりぱっとしないピーター・ジャクソン監督だが、ベストセラー小説を映画化したこの作品も前評判の割に今ひとつ。 「ホビット」は自分で撮る事になったようだけど大丈夫? コレラの時代の愛 (DVD) アメリカ 78点 こちらはガルシア・マルケスの小説の映画化。 スペイン、イタリア、アメリカなど、多国籍な演技派俳優によって繰り広げられる50年以上に亘る物語なのだが、主演男優は年齢によって二人が演じているのに主演女優が変わらないのは納得出来なかった。 主演のイタリア女優ジョヴァンナ・メッツォジョルノは、超美人ではあったけど・・。 イタリア的恋愛マニュアル (DVD) イタリア 76点 連作形式で綴られる、4つの男女の恋愛物語。 コメディタッチではあるけれど、かなりシニカル。 イタリア的とはいうものの、国は違えどいずこも同じと思えるシーンもいろいろあって面白かった。 口も動くが手もよく動くところがなんともイタリア的だった。 12月に観た映画 運動靴と赤い金魚 (DVD) イラン 80点 素人の子供を使って次々と良い映画をつくり続けているイラン。 この映画では、兄が妹のために頑張るがなかなか思い通りにならず、その時にみせる半べそをかいたような素のまま表情が素人ならではで、なんだか愛しかった。 パパは出張中 (DVD) ユーゴスラビア 77点 50年代のユーゴを描いたエミール・クストリッツァの85年の作品。 結構深刻な内容なのだけど、クストリッツァ独特のユーモアや官能性が漂う作品。 「サラエボの花」でお母さんを演じてたミリャーナ・カラノヴィッチが、好色な夫にヤキモキしながらもどこか健気な妻を好演している。 シチリア・シチリア (劇場) イタリア・フランス 75点 30年代から50年代に掛けてのシチリアを描いた大河ドラマだけど、前にも書いたように長い割には盛り上がるシーンがなく、だらだらとした印象が否めなかった。 風景などは美しかったのに残念。 グリーン・ゾーン (DVD) フランス・アメリカ・スペイン・イギリス 74点 こんな告発映画いまさら作ったって遅いよ、と思いましたが・・。 まあ、今にならないと出来なかったのかもしれないけど。 主人公もヒーロー的に描かれ過ぎ。 ハングオーバー・消えた花婿と史上最悪の二日酔い (DVD) アメリカ 71点 世評がかなり良かったので借りてみたけど、全然好みじゃなかった。 「ホット・ファズ」もだめだったもんなあ。 10月に読んだ本 走れメロス 桜桃 ヴィヨンの妻 その他 太宰治 (電子書籍)76点 高校生の時「斜陽」と「人間失格」を読んで以来、太宰治は苦手だが、Ipod Touchを買ったので青空文庫でまとめ読みしてみた。 でもやっぱり今ひとつ良さが判らない。 青空文庫には太宰氏の集録作品がとにかく多い。それだけ人気ということか? アプルビイズ・エンド マイケル・イネス 78点 相変わらず衒学趣味的ではあるものの、「ハムレット復讐せよ」に比べるととっつき易い。 妻となる女性との出会いも描かれている。 シティ・オブ・ボーンズ マイクル・コナリー 82点 いままで読んだボッシュシリーズに比べまったりした展開だが、それでも飽きずに読ませるところは流石。 ボッシュの今後を予兆するような気になるラストが待っている。 黒死館殺人事件 小栗虫太郎 (電子書籍) 80点 夢野久作の「ドグラ・マグラ」、中井秀夫の「虚無への供物」と並ぶ3大奇書といわれているそうだが、他の2冊とは比較にならないくらいぶっちぎりに変な本。 なにしろ途中でストーリーさえ把握出来なくなり、読み終わった後がっくり疲れるが、何故か再読、いや再挑戦したくなる不思議な本。 黒い天使 コーネル・ウールリッジ 81点 無実の罪に問われた夫のために真犯人を探す妻という内容のためか些かメロドラマじみてはいるものの、江戸川乱歩に絶賛された作者の作品だけあって読み出したら一気に読了してしまう面白さだった。 男性作家にも関わらず、女性の心理描写など抜群に上手い。 輝くもの天より落ち J・ティプトリー・ジュニア 74点 SFは苦手なのであまり読まないのだが、書評が良かったので読んでみた。 前半はファンタジックな雰囲気で悪くなかったのに、後半ホラーともいえる血みどろの展開が待っていて閉口した。 金狼 あなたも私も 久生十蘭 (電子書籍) 80点 この人の小説も青空文庫に多く集録されているので読んでみた。 同時代の小栗虫太郎を読んだ後だったせいか、時代を反映した手堅く面白い推理小説という感じだった。 それにしても青空文庫はありがたい。 人類進化の700万年 三井誠 83点 著者が学者でなく科学担当の記者なので、読んでいて判り易い。 科学の進歩は日進月歩で、ちょっと前に教科書で習ったことも今では古くなっているらしい。(私なんか、つい数ヶ月前に知って面白いと思った知識が、この本ではもう古いと書かれていてがっかりした)最新の人類の進化史をざらっと知るには最適の一冊。 ドッグ・イート・ドック エドワード・バンカー 84点 作者は元犯罪者でアメリカの安部譲二みたいな人。 それだけにリアルな描写が読み応え充分。 元犯罪者が書いたからと言って、ラストは犯罪者に甘くない。 11月に読んだ本 ソフィー ガイ・バート 78点 アマゾンの紹介文にはダークファンタジーとあったけど、ジャンル的にはファンタジーというよりサイコスリラーに近い。 思春期の姉弟の心情を繊細なタッチで綴っている上構成も凝っていて、どんな結末が待っているのかと思ったら、私的にはなんだ、と思うような内容で終わってしまい、かなり不満が残った。 イラクの中心で、バカとさけぶ 橋田信介 85点 2004年にイラクで襲撃されなくなった橋田氏の最後のルポ。 緊迫した現場のルポのはずなのに、語り口は軽妙。そういった所に著者の人柄が感じられ感慨深かった。 シャッターアイランド デニス・ルヘイン 78点 4年くらい前に読んだが、映画が公開されたので再読した。 最初に読んだ時にはあまりルヘインらしくない小説(特にラストが)と思ったが、再読してみると主人公にはルヘインの作品ならではの痛々しさが感じられた。 でも、他の作品に比べるとやっぱりちょっと・・。 日本はなぜ縮んでゆくのか 古田隆彦 80点 日頃ニュースを見ていて、円高と人口減少とデフレがなぜ悪い現象とばかり取り上げられるのか、いまだによく判らない。 著者によると、人口減少というのは人類の歴史の中では過去に何度も起こったそうで、日本に歴史の中でさえ、今が特別というわけではないそうだ。 素人的には、近代現代ならともかく、古代やそれ以前の人口はどうやって調べるのか、その統計にどれくらいの正確さがあるのか疑問があったが、その解説がなされていない点が不満だった。 外套・鼻 ゴーゴリ(電子書籍) 83点 不覚ながらゴーゴリの作品は読んだ事がなかったが、ユーモアとアイロニーと幻想性と社会批判がないまぜになったこの2作は、なんとも言えず面白かった。 適度にレトロな雰囲気を伝える平井肇氏の訳文も秀逸。 空中ブランコ 奥田英朗 (電子書籍) 80点 App Storeで面白そうな電子書籍を探していて見つけた一冊。 浮世離れした精神科医の元を訪れ、次々と癒されていく人々を描いている直木賞受賞作。 日頃日本の作家の小説はあまり読まないのだが、現実離れした主人公のせいか、この小説には日本の小説にありがちなウェット感がなく、結構楽しめた。 ロウアーミドルの衝撃 大前研一 82点 2006年出版のこの本に書かれている事は正鵠を射ていると思うが、2011年の現在、この本に書かれている提言の一体どれくらいが実現しているのか、考えると気が滅入る。 自民党に日本は託せないと思ったから民主党に投票した国民は、次回の選挙で一体どこに投票すればいいんだろう。 日本が沈没する日も近いか、などと思う今日この頃。 人体 失敗の進化史 遠藤秀紀 83点 素人的に考えると、人体について知るには養老先生のように人体を解剖するのが普通と思っていたが、動物の解剖学を専門とする著者が、ありとあらゆる動物を解剖することによって人体の進化に迫っているところは新鮮だった。 解剖学に対する著者の熱い思いも伝わってきた。 12月に読んだ本 あなただけは許せない リチャード・パリッシュ 80点 ジャンルとしてはリーガルサスペンスに属するのだろうが、単なる法廷ドラマに留まらない。 単なる手続き上の不備によって、明らかに有罪の人間が無罪にされてしまうという現代のアメリカの法曹界が抱える矛盾みたいなことをドラマチックに描いていて、かなり読み応えがある。 死は万病を癒す薬 レジナルド・ヒル 79点 前作で死にかけたダルジールが、療養中にも関わらず大活躍する。 作者によると、なんでもジェーン・オースティンの未完の著である「サンディトン」にダルジールとパスコーを当てはめたのだそうで、どうりで序盤はいつもと作風が違う。 そこが面白いと思う人もいるかもしれないが、私にはちょっと饒舌に感じられた。 秘密 PDジェイムズ 77点 齢80を過ぎてここまで緻密で長大な物語が書けると言うのは、正に驚嘆に価するが、それでもやっぱり全盛期の面白さは感じられなくなった。 このシリーズもそろそろ終わりかと思うと寂しい気もする反面、もういいような気もする。 イン・ザ・プール 奥田英朗 (電子書籍)78点 直木賞を受賞した「空中ブランコ」のシリーズ第一作。 とにかくつぎつぎ奇妙な病気の人が訪れるが、一番妙なのが診察する医者と看護婦というところがミソの小説。 既成概念に囚われない人というのは癒しになるのかも。例えば高田純次の本だって結構売れてるみたいだし。 ルー=ガルー 忌避すべき狼 京極夏彦 (電子書籍)79点 一般公募した近未来の日本のイメージを元に小説を書くという、新しい試みで生まれた作品で、京極夏彦の電子書籍第2弾。 電子版では、本にはなかった石井明治氏のイラスト挿絵の特典があったり、コミックの試し読みなども出来る。 未来社会なのに登場する刑事の口調が戦後の小説と変わらないところが、いかにも京極さんらしい。 まほろ駅前多田便利軒 三浦しをん (電子書籍)78点 こちらも直木賞受賞作。 本来、芥川賞や直木賞作品に興味があるわけではないが、App Storeではそんな本ばかり扱っているからしょうがない。 この作品は、便利屋を営む男とそこに転がり込んだ友人のでこぼこコンビが、舞い込んだ依頼をこなしていく様が時にユーモラスに時にほろ苦く描かれていて、途中まではかなり面白かったのだが、ラストが人情譚的な終わり方をしてしまっているところが私的には残念だった。 それにしても、いまのところ電子書籍には現代の翻訳小説が極端に少なく、翻訳小説好きの人間には読む本が殆どない。 もっと翻訳小説を電子化してください。お願いしま~す。 レクイエム アントニオ・タブッキ 78点 この人の小説は初めて読んだが、現実とも非現実ともつかない街を主人公が徘徊する様は、映画化された「インド夜想曲」と極めて近く、これがこの作家の作風なのかと思わされたが、どうやら違う作風の作品もあるようなので、今度はそちらを読んでみたい。 サマワのいちばん暑い日 宮嶋茂樹 86点 この人を最初に知ったのはもう20年くらい前だと思うが、本を読むのは今回が初めて。 カメラマンなのに文章が上手く、知識も豊富でびっくりした。尤も、ちょっと下世話で下ネタなども織り交ぜた書きっぷりは、テレビで見た印象そのままだが。 先に書いた橋田信介氏を上官と仰ぎ、最後に会ったのもこの人だそうで、あとがきに「この書を橋田信介氏と小川功太郎氏にささげます」とあるのが切ない。 ※下記の広告はExciteの営業活動の一環として掲載されるもので、主催者が載せているものではありません ■
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by chiesan2006
| 2011-01-13 04:14
| 映画と本
2010年 10月 27日
(採点はあくまで私の主観に基づいていますので、私のレベルが低いせいで理解が及ばす、伸びない場合も多々ありますので悪しからず)
9月に観た映画 ああ、結婚生活 (DVD) アメリカ 79点 既婚者のクリス・クーバーの不倫相手を、独身の遊び人ビアーズ・ブロスナンが奪ってしまうという内容。 もっとコメディタッチかと思ったら、案外シリアスだった。 別れたら生きていけないといった風情に見えたクリス・クーパーの妻にも実は若い恋人がいたりして、すったもんだの末、結局元のさやに納まる。 一見まともな結論のように思えるが、なんだかクリス・クーパーが可哀想に思えた。 他の俳優陣だったら面白くないと思ったかもしれないが、配役が適材適所だったせいで楽しめた。 特にクリス・クーパーの情けない縁起が抜群だった。 彼女を見ればわかること (DVD) アメリカ 76点 こちらは5人の演技派女優が演じる、5つのオムニバス形式のシリアスな人間ドラマ。 すべてのエピソードに社会的弱者(介護が必要な老人、ホームレス、死を宣告された病人、小人、盲人)が絡んでいるのが特徴的で、それぞれの物語がちょっとづつ繋がっている。 それでも時代が現代だし、それほど突拍子もない設定ではなかったので共感出来る部分もないではなかったが、女性たちが主人公の割にはあまり心に残らなかったのは、ひとえに私の女性としての経験不足のせいかもしれない。 愛と宿命の泉 (DVD) フランス・イタリア 80点 だいぶ前に一度見たことがあるが、友達が録画して貸してくれたので再見した。 前後編に別れる大作で、泉の水を巡る愛憎劇。 イブ・モンタン、ジェラール・ドパルデュー、ダニエル・オートゥイユ、などそうそうたる俳優が出演しているが、なんといっても若き日のエマニュエル・ベアールが凄く可愛い。 前に観た時にはダニエル・オートゥイユはまだよく知らなかったのだが、この映画ではかなり痩せていてその後見た出演作とは雰囲気が全然違う。 かなり大河ドラマ的な展開で、例によってラストに驚きの結末が待っている。 DICCO ディスコ (DVD) フランス 81点 フランス番「フルモンティ」みたいな映画で、文句なく楽しめた。 3人のおじさんがディスコ大会に挑戦する話なのだが、前述した「愛と宿命の泉」に出演していたジェラール・ドパルデューとエマニュエル・ベアールがこの映画にも出演しているが、前作と時の隔たりを感じないではいられなかった。 主演のフランク・デュボスクという人は日本ではあまり馴染みがないが、フランスでは有名なコメディアンだそうで、映画も大ヒットしたそうだ。 どうみてもダンスには縁のなさそうな3人が踊る所が楽しいし、特にコンテストのシーンはかなり上手く踊っていて、頑張って練習した様子がありありで凄く笑えた。 願わくは、ドパルデューみたいに日本でもお馴染みの俳優に踊って欲しかった。 暗い映画に出演することの多いベアールだが、この映画ではダンスも披露している。 それからK1ファイターのジェローム・レバンナがちょい役で出演していて驚いた。 ヴィトゲンシュタイン (DVD) イギリス・日本 75点 ヴィトゲンシュタインの著作は全く読んだ事がないし、哲学者であるという以外は知らないのだが、デレク・ジャーマンの代表作だということで借りてみた。 といっても、デレク・ジャーマンの映画も「エドワードⅡ」しか見た事がないのだが・・。 この映画も「エドワードⅡ」同様さながら舞台劇のような独特の映像感覚で作られていて、子供の頃のヴィトゲンシュタイン自身が狂言回しのような役割を担っている。 デレク・ジャーマンの映画は難解だといわれるが、この「エドワードⅡ」もこの映画もそれほど難解なところはなく、ヴィトゲンシュタインの生涯をざらっと知ったり、興味を持つきっかけとして見るには良いのではないだろうか。 インビクタス 負けざる者たち (DVD) アメリカ 77点 クリント・イーストウッドが監督し、主演のモーガン・フリーマンと助演のマッド・デイモンがアカデミー賞にダブルノミネートされた話題作。 イーストウッド監督の映画は暗い作品が多いが、この映画はスポーツを通じて人種対立する国内の融和を図るネルソン・マンデラが主人公のヒューマンドラマになっている。 でも、デンゼル・ワシントンが主演した「タイタンズを忘れない」にそっくりだった。 スポーツを見るのは好きだし、選手たちの姿を追ったノンフィクションやドキュメンタリーには感動するけれど、これぞ人間ドラマと言った感じで映画にされてしまうと、なんだか作り事めいて素直に感動出来ないのは、きっと私がへそ曲がりだからだろう。 500日のサマー (DVD) アメリカ 75点 のっけから「これはBoy meets girlの物語だけれど、恋愛映画ではない」みたいなナレーションが入って、期待させるけれど、案外他愛なかった。 大きな瞳にブルーのリボンなんか結んだ、昔の少女漫画の主人公みたいな外見で、一見清純派なのにやることは大胆という、男の子が夢見る理想の女の子をなんの衒いもなく具現化したサマーを全く魅力的に感じなかったから、それに翻弄される青年の気持ちも理解できなかった。 そういった事をすべてわきまえてシニカルな気持ちででも見られれば面白かったかもしれないが、そんな気持ちにもなれなかった。 ただ、「インセプション」にも出演していた、顔が若い頃の草刈正雄みたいなジョセフ・ゴードン・レヴィットにはかなり興味が沸いたが・・。 カサンドラズ・ドリーム 夢と犯罪 (DVD) イギリス 76点 ウディ・アレン監督が「マッチポイント」「タロットカード殺人事件」に続いて撮り上げたロンドン三部作の最後を飾る犯罪ドラマでウディ・アレンの映画なのになぜかアメリカ映画ではない。 二人の兄弟がお金に困って殺人を犯すというストーリーでコメディではないのだが、一見優等生風なユアン・マクレガー演じる兄より、ちょっと不良っぽいコリン・ファレル演じる弟のほうが殺人にも消極的だし、犯行後も良心の呵責に悩まされる所に意外性があった。 カサンドラとはギリシャ神話で不吉な予言をする王女だが、この映画では弟がその予言者の役割も担っているようだ。 ラストは予言どおり悲劇的な終わり方をするが、「マッチポイント」のように捻った感じでもなくあっさり終わってしまう所が少々物足りなかった。 DVDの特典には、全くインタビュー慣れしていない若い女のインタビュアーの質問に、欠伸まじりで応えるウディの変な映像が収録されている。 こんな映像を特典扱いするなんてなんだかな、と思ったが、ウディ・アレンのいつにない一面が見られたという点ではちょっと面白くはあった。 9月に読んだ本 ハムレット復讐せよ マイケル・イネス 77点 30年代の作家なのだが、本職は英文学教授というだけあって、随所に文学的教養がちりばめられていて、ミステリーとしてどうこうよりそれが楽しめるかどうかも評価の分かれる所。 でも、同年代のドロシー・セイヤーズなんかにもちょっとその傾向があるから、この年代にはそういった書き方が流行っていたのかもしれない。 以前読んだ同じ著者のミステリー「ある詩人への挽歌」はその点はあまり気にならなかったような記憶があるが、この小説は「ハムレット」上演中の惨劇ということもあって、ハムレットに関する知識もあったほうが楽しめそうだ。 その上スパイなども暗躍し、いろいろな要素がてんこ盛りで、難解というわけではないがややこしい。 動物の値段 白輪剛史 82点 象でもキリンでも猛獣でも、飼える環境さえ整えられれば誰でも飼えるという事をこの本を読んで初めて知った。 但し著者は、一般人が野生動物を飼う事は全くお薦め出来ないとも言っているのだが・・。 著者は爬虫類を中心にした動物の卸商で、驚いた事にこの本の出版時には「種の保存法に関する法律違反」で公判中だったそうだ。 でも、本書を読むとそんじょそこらで動物愛護を訴えている人たちに負けないくらい動物に対する強い愛情を感じた。 動物商と動物保護団体は所詮水と油だそうだが、反面ワシントン条約加盟国の中には野生動物の国際取引に理解を示している国も多いと言う。 日本は世界有数の動物輸入大国なのだそうだが、現在輸入禁止動物が増えてしまって動物商は危機的状況らしい。 現在多くの動物が絶滅の危機に瀕してはいるが、動物の取引がそれに関与している割合は極めて低いと著者は言う。 なにはともあれ、生き物の値段をオープンにすることで、もっと見えてくることがあるのは確かだろう。 アインシュタインの天使 荒俣宏 金子務 81点 作家で博物学研究家の荒俣宏氏と、科学史家の金子務氏の「落下」をテーマにした哲学的、科学的対談集。 天使の視点でなされたというアインシュタインの思考実験にちなんで、本のタイトルがつけられている。 「好むと好まざるとにかかわらず、上から下へという重力の方向は地上の生き物たちの基本行動を支配し(中略)重力のくびきがあったからこそ、人間の技術的文明的目標は、下から上への還帰的営為に向けられてきた」 面白いけれど難しい、難しいけど面白い。でもやっぱり難しい本だった。 金子氏の科学者ではなく科学史家としての視点が、従来の科学者が書いた本と違った面白さがあった。 鈴木清順エッセイコレクション 80点 映画監督の鈴木清順氏のエッセイ集。 鈴木清順監督の映画は「チゴイネルワイゼン」と「陽炎座」の2本を見ただけだが、これらの作品の印象はとにかく強烈で、日本の監督のみならず世界の監督の中でもこの人は特別という思いが私の中ではかなり強い。 この監督が実はエッセイストとしても有名ということは、実はあまり知らなかったが、70年代から90年中頃まで25年くらい書き続けていたらしい。 エッセイというと、日常的な出来事や読書体験を元に書かれた散文という感じが強いが、清順監督のエッセイは、その映画同様、突然現実とも幻想とも付かないような散文詩的な夢幻の世界に突入するのが特徴的だ。 決して読みやすくはないが、文章にも映画同様の個性が表れていて面白い。 更に、暴力やナチスを賛美する文章を堂々と書いているが、そこには戦争体験から導き出された社会に対するシニカルな視線や感情があるように思えた。 あまり読んだ事がないような、個性的なエッセイだった。 本に読まれて 須賀敦子 83点 須賀さんのエッセイともいえるような書評集で、1冊にかける文章が短いのでさらりと読め、多くの本に関する情報を得る事が出来る。 決して装飾的ではないけれど、しっかりとした美意識に裏打ちされ、その上論理的でもある須賀さんの文章は、なにしろ読んでいると気持ちが良い。 紹介されている本も、小説、古典文学、詩集、エッセイ、評論、写真集と多彩で、すでに読了した本も何冊かあったが、その本の良さを再確認出来、さらに未読の本への興味も書きたてられた。 今後の読書の参考書としてはもってこいの一冊。 サイエンス・ミレニアム 立花隆 81点 政治経済のみならず、科学や社会問題などカバーするエリアが多岐に亘る立花氏。 この本は「ニュートリノ」「性転換」「鯨衛星」「地球史」「脳形成遺伝子」「環境ホルモン」という6つの科学分野で、6人の最先端の科学者たちと行った対談集。 2000年直前の時点から21世紀に掛けての展望と問題が、それぞれの分野でざらっと語られていて興味深い。 立花さんの立場は一般人の代表だけれど、流石にどの分野に関しても玄人はだしに詳しく、突っ込みも鋭く、特に脳に関しては本を何冊も書いているだけあって、専門家も驚くくらい知識が豊富だ。 印象的だったのは、これからの環境問題は真理が必ずしも見極められなくても「何が正義か」を優先させるべきだと言う点で、環境ホルモンの専門家シーア・コルボーンとの意見が一致していた事。 タール・ベイビー トニ・モリスン 83点 いままで読んだ2冊のトニ・モリスン「スーラ」と「ビラブド」に比べ、わかりやすいし内容もドラマチックで印象的。 前2冊の物語は多くの紙面が黒人のコミュニティー内で起こる出来事について書かれているのに対し、この小説は黒人でありながら白人の庇護の元成長した娘と、貧困の中で育ち、黒人という立場に固執する青年の恋と破局を描いている。 さらに、白人の雇い主の元で長年働く娘の叔父夫妻など、白人と共に暮らしていかなければならない人々の苦悩や立場の違いから来る対立などを繊細なタッチで描いていて、前2作に見られたような表現の難解さも少なく、読みやすい。 主人公の娘は、黒人の中では色が白いのだが、「黒人社会では色が黒ければ黒いほど尊重される」と言っていたマイルス・デイビスの言葉をいつだったか読んだことがある。 黒人同士のそういった微妙な立場の違いが、この物語にも反映されていて興味深かった。 モールス(上)(下) 80点 8月に見た「ぼくのエリ、200歳の少女」の原作本。 流石にシナリオに原作者が参加しているだけあって、映画は実に良く原作の雰囲気を踏襲している。 ただ、やはりそれぞれの人物の心理描写には原作ならではの細かさがある(特に、エリに噛まれてバンパイアに変身していってしまう女性の心理描写には、映画では表現しきれないリアリティがあって秀逸だった) あと、エリの僕(しもべ)と言っても良いホーカンが、顔に硫酸を浴び怪物のような容姿になってい追ってくる描写は、映画では大幅にカットされている。 これらの描写をそのまま映像化してしまったら、映画のほうは一部のホラーファンのための作品になっていただろうから、この変更は大正解だったといえる。 それから例の傷の描写は思ったほど生々しい感じでもなかった。 日本の配給会社があのシーンに傷を入れた意図は、やはり良く判らなかった。 それから、映画では良く判らなかったエリの過去も、原作では詳しく語られている。 ※下記の広告はExciteの営業活動の一環として掲載されるもので、主催者が載せているものではありません ■
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by chiesan2006
| 2010-10-27 23:47
| 映画と本
2010年 10月 04日
(採点はあくまで私の主観に基づいていますので、私のレベルが低いせいで理解が及ばす、伸びない場合も多々ありますので悪しからず) 9月は更新が滞って、1ヶ月遅れになってしまいました。申し訳ない。 8月に観た映画 アンナと過ごした4日間 (DVD) ポーランド・フランス 78点 ロマン・ポランスキーの「水の中のナイフ」のシナリオも書いているポーランドの巨匠、イエジー・スコリモフスキが1990年以来17年ぶりに撮った映画。 その間何をしていたのかといったら、せっせと映画に出演していたらしい。「イースタン・プロミス」で、ナオミ・ワッツの伯父役でも。 女性に対する思いが高じて些か常識外れの行為に走る男の話なのだが、主人公の男性の不器用さが、時にユーモラスでちょっとカウリスマキの映画を思わせる。 でも、この映画の主人公は、カウリスマキの登場人物みたいに飄々と浮世離れしていない所が悲しい。 愛するが故の行為なのだが、相手の女性には受け入れられない。 でも、過激な行動が功を奏する映画だってある。 純愛とストーカーは紙一重。 クリーン (DVD) フランス・イギリス・カナダ 79点 主演のマギー・チャンが2004年のカンヌ映画祭主演女優賞に輝いたと言うだけあって、なんだかマギー・チャンのために作られたような映画だった。 なにせ英語、中国語、のみならずフランス語のセリフもぺらぺら喋り、その上歌まで披露している。 監督・脚本のオリヴィエ・アサイヤスはマギーの元夫でこちらもマギーの主演作「イルマ・ヴェップ」撮ったフランス人。 なるほどそれでフランス語にも堪能のなかと納得。 役柄としては、3カ国が喋れなければならない必然性はなかったので、やはりマギーのために書き下ろしたのかも・・。 相変わらずのスレンダーボディのマギー・チャンは流石の演技だったけれど、それ以上に印象に残ったのは、いつになく普通の人を演じていたベアトリス・ダル。 ジュリー&ジュリア (DVD) アメリカ 76点 「ダウト/あるカトリック学校で」でも競演していたメリル・ストリープとエイミー・アダムス主演の実話に基づいて作られた映画。 メリルの演じる役はテレビなどでもおなじみの料理研究家の役で、その喋り方を真似ているようなのだが、日本人には馴染みのない人なので、似ているのかどうかはよく判らなかった。でも、上手いと言うよりいつになく臭さが鼻に付いた。 エイミー・アダムスは自然体で良かったけれど、いかにもカロリーの高そうなフランス料理を1年間に亘り毎日食べ続けて、果たして1年後にも映画のように同じ体型でいられたのかどうかは気になる所だった。 西洋の料理を題材にした映画は、料理が美味しそうなのもさることながらいつもカロリーの高さが気になる。 やはり日本食は健康的だ。 私の中のあなた (DVD) アメリカ 79点 いかにも現代的なテーマを、女性ならではの視点で描いたジョディー・ピコーの原作を、監督のニック・カサヴェテスがニュアンスを損なわないように、上手く撮っている。 「リトル・ミス・サンシャイン」のアビゲイル・ブレスリンがすっかりお姉さんぽく綺麗になっていて驚いた。 重度の白血病の娘を生かし続ける事を絶対に諦めない母親を、キャメロンディアスが好演いているのだが、その白血病の姉を演じているソフィア・ヴァジリーヴァという当時17歳の女の子が、「ジュノ」のエレン・ペイジ以上に上手かった。 ラストは賛否両論だった原作を全く変更しているのだが、全体の流れとしては映画のほうがずっと自然で、原作のラストに違和感を感じていた私も、映画は非常に納得できた。 ソルト (劇場) アメリカ 75点 アンジェリーナ・ジョリー主演のスパイ映画だが、いかにもハリウッド的な派手なアクション作品。 アンジーの人気のせいか、アメリカでも日本でも大ヒットを記録したらしい。 アンジーは頑張っているとは思うものの、やはり男性のアクションに比べると見劣りがするのは否めない。 話は2転、3転して、挙句の果てには「次回作に続く」というような終わり方になっていて、女性版ジェイソン・ボーンを狙っているのがみえみえだった。 フェアウェル さらば哀しみのスパイ 80点 (劇場) フランス こちらは「ソルト」とは対照的な、実話に基づいた渋いスパイ映画。 内容もさることながら、主演のエミール・クストリッツァの独特の風貌と演技が光った。 イエジー・スコリモフスキといいこの人といい、東欧の監督には独特の存在感がある。 流石にフランス映画だけあって、アメリカ人が完全に脇役、しかもヒール扱いのところが面白かった。 告白 (劇場) 日本 76点 久しぶりに映画館で見た日本映画。 この監督の作品は、テレビで「下妻物語」と「嫌われ松子の一生」を見ていたが、その独特の映像感覚がこの映画にも表れている。 社会的な問題を多く含んだ内容にもかかわらず、エンターテイメント性が強いところに、私はちょっと違和感を覚えた。(原作自体そういった傾向のようなのだが) 出演者は子供たちも含め皆熱演しているが、その中にあって、唯一クールな演技に終始した松たか子が秀逸だった。 8月に読んだ本 ビラヴド トニ・モリスン 82点 かつてコロンビアのノーベル賞作家ガルシア・マルケスの作品が「魔術的リアリズム」と評されていたが、トニ・モリスンの小説も、アフリカ系アメリカ人が先祖の土地アフリカから受け継いだ、土着的な伝承や呪術性抜きには語れないだろう。 この小説にも日常性の中に非日常的な事柄が、あたりまえのように盛り込まれているし、表現が抽象的で少々難解に感じられるところもある。 ただそれがこの人の小説に独特の味わいをもたらしていて、それがアメリカにおける黒人の歴史や特に黒人女性の立場とというテーマ性と相俟って、この人の作品を文学にまで昇華させているように思える。 死んだ娘と同じ「ビラヴド(愛される者)」という名前を持つ少女もなんだかとても象徴的な存在に感じられた。 カブールの燕たち ヤスミナ・カドラ 83点 アフガニスタンに関しては、映画は「カンダハール」と「アフガン零年」を見たし、小説は「君のためなら千回でも」と本作を読んだが、いずれも胸が痛くなるような作品ばかりだった。 本作の作者は元軍人だそうだが、この本にはとてもそういった職業についていた人が書いたとは思えないほど繊細な男女の機微と、それ故の悲劇が描かれている。 オバマ大統領になってから、アフガンへの軍事介入はますます強化されているが、相変わらず治安は安定しないようだ。 「君のためなら千回でも」には、紛争前の穏やかなアフガンの様子が描かれているが、一日も早くそんな日が訪れて欲しいと切に思う。 ヴェネツィアの宿 須賀敦子 80点 前回読んだ「遠い朝の本たち」では、思いがけずやんちゃな少女時代の須賀さんの姿が垣間見られたが、この本では戦時中から戦後、そしてイタリア留学時代の須賀さんが描かれている。とにかく真面目で意志堅固で努力家で、凄いと思わされることばかり。 でも、人に対する視線が柔らかく暖かいので、読んでいて息苦しくなるような事もない。 只、愛人を作ったお父さんに関するエピソードは、いつになく文章に気丈さが表れていて、こう言ったらなんだけど、結構面白かった。 早世されたご主人とのエピソードは切ない。 オトラント城奇談 ウォルポール (電子書籍) 70点 電子書籍専門店「グーテンベルク21」で購入してIpod Touchに直接ダウンロードしようと思ったら出来なかったので、PCからIpodにメールしてIpodのメールで読んだら凄く使い勝手が悪く、読みにくかった。何か良い方法はないものだろうか。 18世紀のゴシック小説としてはかなり有名な本なのだが、なにしろ訳文が物凄く古くさく、特に女性の言葉使いがまるで歌舞伎の台詞のようで、読むのにかなり閉口したし、内容も思ったほど怪奇的でもなくあまり楽しめなかった。 現在、他の訳者の講談社文庫版にはアマゾンのコレクター価格4500円が付いている。 訳文が違ったらもう少し楽しめたかもしれないのに残念。 ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士 (上)(下) 79点 スウェーデンで大ヒットした「ミレニアム」シリーズの第3弾。 前作の最後で、頭に銃弾を受け生き埋めにされたにもかかわらず生き延びた、殆ど不死身と言ってよい主人公のリスベットが、今回は病院のベッドの上から巨悪に挑戦する。 と書くと、なんだか現実離れした娯楽小説のように思われるかもしれないが、作者が元ジャーナリストというだけあって、娯楽小説といえども細部の描写などにもこだわりがあり、凄く面白い。 作者は本シリーズがデビュー作であるにもかかわらず、本作を書き上げたあと映画化を見る前に心臓発作で他界してしまった。本作のラストではさらに続きがありそうな気配が濃厚なのだが、それも幻となってしまったのは凄く残念だ。 因みに、本のカバーの写真は映画とは何の関係もありません。 死者の名を読み挙げよ イアン・ランキン 84点 相変わらず微に入り細に入り書き込んでくれて、登場人物も多く、心して読まないと判らなくなる。最後にあっと驚く犯人が・・。 ランキンの小説は必ずしもすっきりと解決を見ないこともあるので、ラストにカタルシスを得たい人には向かないかもしれないが、現代のミステリー界で、この人以上にじっくりとした人間ドラマを書ける人なんて、そうはいないんじゃないかと思う。 相棒のシボーンに「仕事にとりつかれ、キャリアからはずされ、意固地で信頼されない。」と評される主人公のジョン・リーバスだが、組織や結婚生活には適応できないものの、ひたすらにひたむきで、仲間を思いやる気持ちなど人一倍強い所がなんとも言えず魅力的だ。 それに案外女性にももてる。(それって作者の願望の表れかもしれないが・・) 日本語の美 ドナルド・キーン 83点 日本文学の研究者であるドナルド・キーンさんは当然のことながら日本語に精通しているが、意外や単行本はすべて英語で書いていて、それを日本人の訳者が翻訳しているのだそうだ。 本書の前半は、そんなキーンさんが「中央公論」の巻頭言を「日本語の特徴について書き続けたら面白いかもしれない」と思いつき、2年間に亘って日本語で綴ったエッセイをまとめたもの。 ご本人が「私にとって日本語は外国語ではない」と言い切るだけあって、非常に美しく格調のある文章で、こう言ったら失礼かもしれないが、並の日本人にはとうてい太刀打ちできないどころか、穴があったら入りたくなるくらい見事な文章だし、日本に対する見識も流石に凄い。 日本にここまでの情熱を傾けてくれる外国人がいるなんて、日本人は幸せに思わなくてはいけないなあ、と思った。 ホワイト・ノイズ ドン・デリーロ 78点 アメリカの文芸批評家のハロルド・ブルームという人は、現代を代表する米国人小説家としてドン・デリーロ、フィリップ・ロス、コーマック・マッカーシー、トマス・ピンチョンの4人を挙げている。 デリーロの小説は、N・Yを舞台に巨額な資金を操るディーラーが主人公の物語「コズモポリス」しか読んだ事がないが、この小説は、ある夫婦とその家族の物語という点では「コズモポリス」より身近だ。 ただ、この人の小説は現代の、それもアメリカという国の状況を色濃く反映しているのも特徴的で、この小説の夫婦も、どちらにもそれぞれ相手の違う子供が何人もいるといった点や、銃を持ち出す点などは非常にアメリカ的だ。 その半面、死への恐怖といった普遍的なテーマや、科学を妄信することに対する警告とも言える内容は、アメリカだけに留まらない現代性がある。 それを薄っぺらでない物語に仕立てている所は確かに面白かったけれど、好みかと言われるとそれほど好きな小説でもなかった。 すべての経済はバブルに通じる 小幡績 81点 WBS(ワールド・ビジネス・サテライト)を見ていても良くわからなかったサブ・プライムローン問題が、一般人にもわかるように解説されている。 凄く面白かったけど、なんだかちょっと怖いような、無力感に襲われるような内容だった。 筆者は「ねずみ講、これがお金が増える理由であり、経済成長がプラスを持続するメカニズムであり、資本主義の本質なのです」と言い、21世紀の経済を「キャンサーキャピタリズム(癌化した資本主義)」と語る。 WBSを見ていても思うけど、経済は人間の営みであるにもかかわらず、なんだかお金が一人歩きして、日に日に人間の手にあまる状況になってきているような気がする。 筆者は最後に、実体経済と金融資本が逆転する可能性があると書いているが、そんな日が果たしていつ来るのか・・。 政党崩壊 伊藤惇夫 80点 自民党を皮切りに、5つの政党の事務局を渡り歩いた筆者が、自らのメモを元に1993年から2003年の10年間を振り返って書いた、備忘録ともいえる内容。 ニュースなどで取り上げられない裏側が描かれていて興味深かったが、いまだに似たような事が繰り返されている既視感もあった。 本書の中でも圧倒的な存在感を放つのが、なんといっても小沢一郎。 自民党幹事長時代の小沢氏に筆者が「これからは政党がシンクタンクを作り、国民にビジョンを提示していくべきではないですか?」と言ったところ、小沢氏は「官僚を使えばいい」と言ったそうだ。それが今や「政治を官僚から政治家に取り戻せ」、などと嘯いている。 変われば変わったものだが、果たして本気なのかどうか・・。 民主党の代表戦に敗れてからちょっと影が薄まったけれど、このまま死に体になるようなタマじゃないのは確かだろう。 心地よい眺め ルース・レンデル 80点 ダークな色調のミステリーを書かせたら当代随一の作家レンデルだけれど、今回はそこに美的な要素も加わっている。 ネグレクトされて育った青年と、目の前で母親を殺されるという幼児体験を持つ娘という、ともに美しい男女が主人公のこの物語。 青年は次々と人を殺すが、その生い立ちの悲惨さは「レッド・ドラゴン」の殺人鬼を思わせる。 ラストにはなんとも皮肉な結末が待っているのだが・・。 ※下記の広告はExciteの営業活動の一環として掲載されるもので、主催者が載せているものではありません ■
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by chiesan2006
| 2010-10-04 03:33
| 映画と本
2010年 08月 20日
6、7月に読んだ本 闇の奥 ジョセフ・コンラッド 80点 コッポラが「地獄の黙示録」の翻案とした小説。 そういわれてみれば、コンゴとベトナムの差こそあれ、現地人の表現の仕方がそっくりだ。 世界の英語圏諸国の大学で、教材として、20世紀で最も多く使用されたそうで、日本でも複数の翻訳本が出版されている。 コーマック・マッカーシーの翻訳を手がけている黒原敏行さんの訳本もあるが、マッカーシーの「ブラッドメリディアン」などにも、通じるところがある。 「地獄の黙示録」のカーツ大佐のモデルともいわれるクルツの最後の「The horror. The horror.」という言葉だけでも、議論百出だそうだ。 環境と文明の世界史 石 弘之 , 湯浅 赳男 , 安田 喜憲 88点 外出する時、本を持って出るのを忘れて、手持ち無沙汰なので駅中の書店で買ったのだが、思わぬ拾い物だった。 環境問題こそが歴史を決定したという史観に基づき、環境学、環境考古学、比較文明史の研究者である3人が、対談形式で論じる文明史。 びっくりするような、新しい、それでいてなるほどと膝を打つような見解が多々述べられている。 上記の本を読んだ後だけに、尚更感慨深い。 何度も読み返したい。 ドグラ、マグラ 夢野久作 (電子書籍) 85点 25年くらい前に読んで以来の再読。 無料の電子書籍専門サイト「青空文庫」からIpod Touchにダウンロードして読んだ。 夢野久作の1935年の作品。 昨今はやりの人間の記憶にまつわる物語だが、最初に読んだ時には、なんて奇妙で複雑でその上面白くて、この作家の頭の中は一体どうなっているんだろうと思ったものだった。 その後、似たような発想で作られた本や映画など読んだり見たりしたけれど、ここまで複雑な構成になっている物語には出会ったことがない。 今回再読し、その構想力の凄さに再度感心させられたが、今回はそれ以上に、変幻自在に書き分けられているその文体に、改めてこの作家の凄さを感じた。 「青空文庫」には夢野久作の著作が多数あるところが嬉しい。 Ipod Touchで読書するのは、日頃バッグの中身が多い私にとって、本を持ち歩かなくて良い分荷物が減るし、画面も明るく字の大きさも調節できるので極めて快適。 死ねばいいのに 京極夏彦 (電子書籍) 71点 Itune Storeで購入し、Ipod Touchにダウンロードして読んだ。 今回の作品は、時代設定が現代で、主人公の口調やテーマも今の時代に即しているところが、今まで京極作品とは違う新機軸だ。 ただ、京極作品はもともと深遠さとか社会批判などには縁がなく、レトロな時代設定の中で、猟奇的、オカルト的な内容を、必ずしも本筋とはあまり関係ない長々とした薀蓄を絡めて、独特の語り口で語る徹底したエンターテイメント性が面白いのだが、現代という時代背景の中で、少々社会批判めいた物語が展開する本作は、語り口は相変わらずなのに、時代が現代になるとなんとも薄っぺらい感じになってしまってあまり面白くない。 印刷媒体だと単行本で1785円、電子書籍は900円でほぼ半額だが、面白くなかったのであまりお得感はなかった。 それにしても電子書籍は出版されているコンテンツが偏りすぎていて、選択の余地が少なすぎる。 これではいくらハードを開発したって、仏作って魂入れず、みたいな状態だ。なんとかして欲しい。 忙しい蜜月旅行 ドロシー・セイヤーズ 77点 貴族探偵ピーター・ウィムジー卿シリーズ最後の長編だそうで、紆余曲折の結果、ようやく恋人のハリエットと結婚に漕ぎ着ける。 そもそも貴族探偵などといった全くリアリティがない設定ながら、プロットや、登場人物の心理描写などは非常に緻密、その上20世紀はじめに女性でありながらオックスフォード大を卒業しただけあって、文学に対する造詣も深く、随所に古典に引用なども散りばめられているところがセイヤーズの魅力。 尤も、それが少々うるさく感じられることもないではないが・・。 今回、犯人を絞首台に送る事になり、ウィムジー卿が苦悩する姿などが描かれるところも興味深かった。 滝 イアン・ランキン 77点 元カノ、ジル・テンプラーが上司になって指図される立場になっちゃった警部のジョン・リーバス。 今回は、相棒のシボーンとそのライバルの刑事エレン・ワイリーの女同士の確執も描かれている。 全く上昇志向のないリーバスに対し、女性陣の上昇志向が強いのには驚かされる。 その上、今回はちょっとしたオカルト的側面も。 複雑巧緻なプロットに、リアルな人間関係を絡ませていく筆致は、相変わらず読み応えたっぷり。 殺人展示室 PDジェイムズ 79点 久しぶりに読んだダルグリッシュ警視シリーズ。 なんと、PDジェイムズ82歳の作品だそうだが、こちらも精緻なプロットと、描き込まれた人物描写が凄い。 齢82歳にして、ここまで入り組んだ作品が書けてしまうなんて、やっぱり常人とは違うのねえ。 でも、警察官でありながら詩人でもあるというダルグリッシュの人物設定って、かなり気取った感じがして実はあんまり好きじゃないんだけど。 恋人エマとの今後の関係も気になる所。 暗黒公使 夢野久作 (電子書籍) 77点 主人公の前に突然現れた美少年を中心に、謎のサーカス団、暗躍する国際スパイなど、その時代のムードを色濃く反映した、レトロな感覚満載のエンターテイメント小説。 夢野作品の中では異色作と言われているらしいが、前述の「ドグラ・マグラ」のような文体の変化はないものの、耽美的で悲劇的な所は、正に夢野ワールド、と思ったが。 私は「青空文庫」からダウンロードして読んだが、印刷媒体では筑摩文庫の「夢野久作全集7」に収録されている。 私の中のあなた(上)(下) ジョディ・ピコー 79点 重い白血病の姉を助けるため、ドナーになることを運命付けられて生まれてきた妹という設定は、カズオイシグロの「私を離さないで」を思い出させたが、あの小説より実際に起こりそうな話なだけに考えさせられた。 この映画は完全にフィクションだけれど、遺伝子操作によって好みの子供を誕生させる「デザイナー・ベビー」は、「ガタカ」のような映画の世界だけの話ではなくなってきているようだ。 改正された臓器移植法案のことなども頭に浮かんだ。 只、文章は過剰に情緒的で、もう少し硬質なほうが私好みではあったし、どんでん返し的ラストも、ちょっと受けを狙っているようで好きになれなかった。 大英帝国衰亡史 中西輝政 82点 本書は毎日出版文化賞、山本七平賞ダブル受賞したそうだが、専門家的な見地からはいろいろ突っ込みどころもあるらしい。 でも、私のようなざらっと歴史を知りたいと思っているような一般読者には持ってこい。 物知らずな私は、チャーチルは偉大な人物と思っていたが、この本を読んで見解が変わった。 それに、現在アメリカや日本が置かれている状況と酷似している点も多々あり、「衰亡していく国というのは、それがわかっていながらもどうにもならない」という説を読むにつけ、やっぱりなあ、と思いつつもなんだかがっかりした。 父の遺産 フィリップ・ロス 80点 作家のフィリップ・ロスが、脳腫瘍に犯された86歳の父親を介護する日々を綴ったノンフィクション。 我が家にも、同世代の母親がいるため身につまされた。 正直言って、同じ状況になったら私はこのように献身的な介護が出来るかどうか自信がない。 情には厚いが頑固で人の言う事には耳を貸そうとしないユダヤ移民の父親が不治の病に倒れたことで、作者が受け取った「遺産」。 同じような状況になったとき、自分も同じように「遺産」とも言える何かを受け取れるほどオープンな気持ちでいられるか、それもやっぱり自身がない。 日本人と日本文化 司馬遼太郎 ドナルド・キーン 83点 司馬遼太郎と日本文学研究の第一人者ドナルド・キーン氏の対談集。 日本文学に携わる二人だが、今回はあえて文学には触れない対談となっている。 司馬遼太郎氏がかなり饒舌なのには驚いが、キーン氏の日本文化に対する造詣の深さにはさらに驚かされる。 もっとも、キーン氏の経歴から考えたら当然の話で、こんな事で驚くのは却って失礼かもしれないが・・。 司馬氏の、日本人だからこそシニカルな日本人感に対し、キーン氏がもっとポジティブに日本人を捉えている所が普通と逆な感じで、キーン氏の日本びいき度が垣間見られて面白かった。 ※下記の広告はExciteの営業活動の一環として掲載されるもので、主催者が載せているものではありません ■
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by chiesan2006
| 2010-08-20 14:29
| 映画と本
2010年 08月 14日
(採点はあくまで私の主観に基づいていますので、私のレベルが低いせいで理解が及ばす、伸びない場合も多々ありますので悪しからず) 6・7月に観た映画 アイアンマン2 (劇場) アメリカ 74点 前作を見ていないせいで話のつながりがわからず、目立ちたがり屋の主人公トニー・スタークにもいまひとつ感情移入出来なかったため、あまり楽しめなかった。 でも、グウェニス・パルトローのいつにないコメディエンヌぶりや、スカーレット・ヨハンソンのアクションシーンが見られたのは面白かったが。 クレイジー・ハート (劇場) アメリカ79点 主演にジェフ・ブリッジスの渋い演技が光ったし、助演のマギー・ギレンホールも好演していたが、なんだかカントリー歌手版の「レスラー」みたいな感じがして、そのわりには「レスラー」のようなひたむきさがなく、ステージの上でも酔っ払っている主人公には共感出来なかった。 ジェフ・ブリッジスもそこそこ歌が上手かったけれど、なんといってもコリン・ファレルの歌が上手かったのには驚いた。 クララ・シューマン (DVD) ドイツ・フランス・ハンガリー 73点 自身も演奏家で、神経質で病気がちの夫に代わって演奏会に出演したり、音楽学校で教えたりするしっかりものである反面、夫とブラームスの間で揺れ動く女性としてのクララを「善き人のためのソナタ」に出演していたマルティナ・ゲデックが好演していたが、どんなに演技力がある人でも、自分が演奏出来ない楽器の演奏シーンが多いとボロが出て些か興ざめ。 こういった映画には、多少なりとも演奏できる人を起用したほうが、リアル感が出て良いような気が・・。 ロスト・イン・ラマンチャ (DVD) アメリカ・イギリス 83点 「ドン・キホーテ」の映画を撮る事が長年の夢だったテリー・ギリアムが、ヨーロッパ映画史上かつてない巨費を投じて作ることになった映画「ドン・キホーテを殺した男」 ジャン・ロシュホール、ジョニー・デップ、バネッサ・パラディなどスターの出演も決まり、いざ撮影開始と思ったら、突然の嵐で機材が流出、おまけに主演のジャン・ロシュホールがヘルニアになり、撮影は無期限延期に。 結局出来た映画はこの「メイキング映像」ならぬ「アン・メイキング映像」のみ。 本編はつくれなかったものの、転んでもただでは起きない感じが凄くテリー・ギリアムらしい。 それに、こんな映画は見たことがなかったので面白かった。 動くな、死ね、甦れ (劇場) ロシア 81点 画面が白黒の所がシンプルで力強く、主役の少年ワレルカを演じたパーヴェル・ナザーロフには素人ならではの存在感があり、共演のディナーラ・ドルカーロワとのアンサンブルも良かったけれど、ところどころに挿入される狂った人たちの映像が些かあざとく感じられ、それらがなかったほうがもっとダイレクトに感動できた気がした。 また唐突に流れる日本民謡が映画のイメージとそぐわない感じがして、こちらもマイナスポイントだった。 ひとりで生きる (劇場) ロシア・フランス 78点 「動くな、死ね、甦れ」の2年後のワレルカを撮った映画。 画面がカラーになり、主演のパーヴェルの演技も洗練されたぶん、力強さが減った。 日本民謡が流れるところと、時々あざといシーンが挿入されるのは前回同様だが、こちらの方がより監督の自伝的要素が強まった印象を受けた。 ぼくら20世紀の子供たち (劇場) ロシア・フランス 82点 上の2作と同じ監督が1993年当時のロシアのストリートチルドレンや、罪を犯して施設に収監された10代の子供たちを撮ったドキュメンタリー。 収監された子供たちの中に、なんとパーヴェルがいた。あまりの事に、最初はやらせかと思った。 施設のパーヴェルにディナーラが会いに行って交わす会話は、とても切実でやるせない。 ストーリーに関連性はないが、ある意味では上記2作の続編とも言える映画。 それにしても、パーヴェルをはじめ、これらの子供たちの現在が気に掛かる。 さらば、美しき人 (VHS) イタリア 79点 「さらば、いとしきひと」と読む。 30年位前にテレビで見て以来、ずっと気になっていた映画。 数ヶ月前に原作について書かれている短編を読んで、思い出してあちこちのツタヤを探してやっと見つけた。 兄妹の近親相姦の映画なのだが、当時24歳のシャーロット・ランプリングが物凄く美しい。 17世紀のイタリアの貴族社会を描いているだけに退廃的、耽美的、そして終盤は陰惨。 ランプリングに対して、兄を演じている俳優がいまひとつ魅力に欠けたのが惜しい。 ずっと見たかった映画なので、採点はちょっと甘め。 ぼくのエリ、200歳の少女 (劇場) スウェーデン 80点 ちょっと珍しい、子供の吸血鬼の映画。 70年代に話題になったビヨルン・アンデルセンみたいな少年が主人公。いるんですねえ、スウェーデンにはこういった少年が。 肝心な部分に修正が入っていて、後でネットでそれに関するコメントを読んでびっくり。 つまり、知らない人は知らないまんまって事。 全く、どういうつもりで修正など入れるのやら。 ラストでは主人公の少年の行く末が気になる。 インセプション (劇場) アメリカ 75点 この映画、私にはいまひとつぴんと来なかったのだが、世評が高くて驚いた。 夢を扱っているのだが、私には夢の世界というより、ゲームの世界に思えて仕方なかった。 だって皆で参加して、守ったり攻撃したり、盗ったり盗られたりって、まさにゲームでしょう。その上やたらと長くて閉口した。 CGも、他のSF映画に比べて優れているとも思えなかったし、デュカプリオが眉間に皺を寄せた演技にも、ちょっと飽きた。 ディファイアンス (DVD) アメリカ 77点 第二次世界端戦中にベラルーシに実在した、ユダヤ人抵抗運動の指導者である3兄弟を描いた実話に基づく映画。 「ラストサムライ」の監督だけに手堅い演出で、こういった出来事を知るには良いが、ナチスとユダヤ人を描いた映画としては月並みな感じ。 それに比べ「イングロリアス・バスターズ」はやっぱり突き抜けてたなあ。 主演のダニエル・クレイグより、弟役のリーヴ・シュレーバーが印象的だった。 ラブ・アクチュアリー (DVD) イギリス・アメリカ 71点 ヒュー・グラント、リーアム・ニーソン、エマ・トンプソン、コリン・ファース、ローラ・リニー、キーラ・ナイトレイ、など演技派俳優多数出演の7つくらいのエピソードが同時進行で語られるラブ・コメディー。 監督は「ノッティングヒルの恋人」と「ブリジット・ジョーンズの日記」の脚本家のリチャード・カーティスという人。 でも「ノッティングヒル・・」は見始めて30分で嫌になって止めたし、「ブリジットジョーンズ・・」は内容を読んだだけ見る気がしなかった映画。 というわけで、この映画も全く私向きではなかった。 エピソードが多すぎるせいか、展開がベタで全く趣がない。 「ノッティングヒル」書いた人だって知ってたら、初めから借りなかったのに・・。 インフォーマント (DVD) アメリカ 78点 90年代なかばにアメリカで起こった経済事件を基に、多少脚色を加えて(と、映画の冒頭に告知される)出来た映画。 「味の素」など、実在の会社名も使われている。 一介のサラリーマンに、FBIが2年半もの間騙され続けるという、嘘のようなホントの話。 この主人公を、マット・デイモンがいままでにない感じで演じている所が面白かった。 監督はスティーブン・ソダーバーグだが、この人ってどうも捉えどころがない。 この映画は面白かったけれど、ソダーバーグらしさというのがどういう点にあるのか、いまだに良くわからない。 消されたヘッドライン (DVD) アメリカ 78点 ちょっと組織からはみ出した、粘り越しの新聞記者が主人公で、演じるラッセル・クロウは全くのはまり役。 対するベン・アフレックは、公聴会で巨悪を追及する国会議員の役。 イギリスBBCのテレビシリーズのリメイクだそうで、石油産業と議会の癒着を、民間の傭兵会社と議会の癒着に置き換えている点はいかにもアメリカ的で、なんだか「24」みたいだった。ただし「24」みたいな派手な銃撃戦はない。 民間の傭兵会社というのは、アメリカではいまや巨大産業のようで、だからこそこのようにテレビドラマや映画の題材になるのだろう。 なんだか怖い話だ。 ラストにどんでん返しがあるが、集中して見ていたせいでどんでん返しがありそうな予感はしたが、犯人は別の人かと思った。 ※下記の広告はExciteの営業活動の一環として掲載されるもので、主催者が載せているものではありません ■
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by chiesan2006
| 2010-08-14 02:00
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